
山口大学 共通教育 分野別科目 自然科学分野

開講時限: 金曜日 9−10 時限 (前・後期)(対象学部:人文、経済、教育)
担当者 西口 毅
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授業の構成(リンク:下線付きの文字列をダブルクリック)
講義 → 雑談 → 演示実験 → 質問・意見表明受付
期末テスト問題例 自己紹介 研究
パソコンQ&A 即戦力
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概要・目標
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今は職業が多様化すると同時に、職務内容が変わる速さも速まりつつある。スペシャリストでなければ評価は低いが、求められるスペシャリストは多様化し変化するので、大学がスペシャリト養成のための教育を行うのは難しくなりつつある。そのため大学での専門と職業との関連性が希薄になりつつある。多くの人にとって、これからの時代に必要なものは、できるだけ広い範囲の職務内容に適応できる幅広い知識と常識であろう。本講では、大競争時代を生きるのに有効性を持つと同時に、「自然について学ぶことの面白さ」が伝わる授業をめざしたい。それができるためには、高いレベルを保ちつつも、高校で化学を履修していない人でも理解できる分かりやすさと、新しい発見とが必要であろう。
日常的現象、生命現象、環境問題、社会的諸問題などを、「それはなぜ起こるのか」という観点から解説する。最も身近な化学反応である燃焼については、毎回行う演示実験によって学ぶ。学生諸君の質問(日頃の疑問など)にもできるだけ答えたい。
いま必要だと言われる「生きる力」とは何か。私は「豊かな常識+豊かな行動力」だと思う。この講義の目的も、自然科学的常識を豊かにすることである。
また、学生諸君が、社会人になったときに、自信をもって生きられるようにすること、つまり、そのために必要な能力と価値観を身に付けるのを手助けすることが、教育でめざすべきものであると思うので、これに関連することがらについての私見も話す。
この授業の基本的ト−ンは、日常的現象と日常的に使う物質の性質を合理的に考えるということである。これは、人の行いや言葉から、その人の考えや心理を推測することや、現実の社会や経済を合理的に分析することなどと、基本的には同である。教養とは元々そういうものであろう。
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テキスト 「現代の生活と物質」(化学同人)(¥ 2200)
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テキストの序文
どの分野の学問でも同じだと思うが、教師が学生に授業で教えられる知識の量はわずかたものにすぎない。学生は、日常生活と将来の職業生活に必要な知識の大部分を、授業以外のものから得なければならない。幸いなことに、現在は優れた図書も多いし、マスメディアも発達している。興味と意欲さえあれば、自学自習の手段と機会はいくらでもある。だから、学生が自然や物質に興味を抱いてくれれば、授業を行う目的の大部分は達成されたといえよう。
---------- 中略---------
これらの授業では、受験で化学を選択し今も基礎科目の化学を履修しつつある受講生にも退屈さを感じさせないと同時に、高校で化学をほとんど勉強しなかった文系の受講生にも理解され興味をもたれるものであることが必要とされた。この困難な課題に多少たりとも応えるために、化学の生活的、社会的、生物学的、および環境的側面を重視する構成をとった。また、高校までの化学で履修した事柄とできるだけ重ならないように配慮した。
是非とも必要なことだけが記された教科書は無味乾燥である。それを避けるために、雑学的なこと、余談的なこともあえてとり入れた。また、化学式は高校で化学を履修していない者にとっては暗号のようなものであるから、化学式の使用は意識的に避けた。しかし、本書が正統的な化学を全面的に排除しているわけではない。社会人として知っておくべきことはとり入れたつもりである。本書によって、「物質について学ぶことの面白さ」が多少なりとも伝わればと思う。
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テキストの目次
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序章
1 物質の誕生 2 物質研究の歴史
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I 身の回りの物質とその振る舞い
1章 水・・・・ 身近で不思議な物質
1 水の惑星の条件 2 水分子のなかの強い結合一共有結合
3 共有結合の分極 4 水素結合 5 水の特異な性質
6 結合水(不凍水) 7 硬水
コラム: 復氷現象 水の味
2章 界面活性剤
1 溶解とは 2 表面張力(界面張力) 3 界面活性剤の構造
4 界面活性剤の働き 5 洗浄助剤(ビルダー)
6 界面活性剤の利用 7 乳化
コラム: 陽イオン界面活性剤(逆性石けん)
3章 コロイド
1 コロイドの分類 2 コロイドの性質とその利用
3 コロイドの沈降法 4 キセロゲルと膨潤
5 チキソトロピー 6 ダイラタンシー 7 浸透と浸透圧
コラム: 電気泳動 ・・・・ 男女産み分けなど
梅酒のつくり方・・・・ なぜ氷砂糖を使うのか
4章 金属
1 金属の使用の歴史 2 金属の展性・延性はなぜ大きいのか
3 電気抵抗と温度 4 熱伝導のしくみ
5 金属にはなぜ金属光沢があるのか 6 さびるとは
7 防錆技術 8 アルミニウム 9 合金の分類と鋼
5章 宝石とレーザー
1-4 ダイヤモンド 5 その他の宝石 6 溶融液からの宝石の合成法
7 溶液からの宝石の合成法 8 レーザーとは 9 レーザーの利用
6章 セラミックスとアモルファス物質
1 古典的セラミックスとニューセラミックス
2 構造用ニューセラミックス 3 アモルファスとは 4 ガラスの歴史
5 ガラスの構造 6 ガラスの性質 7 特殊ガラス
8 線状ガラス 9 シリコン半導体 10 太陽電池
11 太陽電池の将来性 12 燃料電池
コラム: コピーの原理
7章 高分子化合物
1 高分子化合物の分類と繊維の分類
2 高分子合成前史・・・ さまざまな発見
3 巨大分子説(高分子説)の登場
4 ナイロンとポリエステル・・・縮合重合型合成高分子
5 ポリエチレンとポリビニル化合物・・・・ 付加重合型高分子
6 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂 7 天然ゴムと合成ゴム
8 ゴムの弾性 9 高分子液体の性質・・・ 粘弾性
10 高分子のもつ機能とその応用 11 複合材料
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II 生命を支える物質
8章 簡単な有機化合物
1 有機化合物の特徴 2 官能基による有機化合物の分類
3 炭化水素 4 アルコール 5 エ一テル 6 アルデヒドとケトン
7 カルボン酸 8 アミン 9 染料
コラム: 飲酒と酔い pHと緩衝溶液 発色団と助色団
9章 脂質
1 立体異性 2 幾何異性と目が光を感じるしくみ 3 光学異性
4 脂質の脂肪酸成分 5 肥満と抗肥満薬 6 硬化油
7 リン脂質と二分子膜 8 フェロモン 9 ステロイドとドーピング
10 ビタミンD
10章 糖類
1 糖類 2 単糖類 3 二糖類 4 デソプソとセルロース
5 デンプンの味 6 糖タンパク質と血液型
コラム: 立体異性体と味 酒類のつくり方
11章 アミノ酸とタンパク質
1 アミノ酸 2 アミノ酸とうま味物質 3 タンパク質の一次構造
4 タンパク質の高次構造 5 タンパク質の変性 6 酵素
7 タンパク質とポリペプチドのさまざまな働き 8 窒素の排泄
コラム: 人工甘味料 コールド・パーマ
酵素的褐変・・・ 緑茶と紅茶
12章 核酸とATP
1 核酸の性質と機能 2 タンパク質の生合成と遺伝子工学
3 エネルギーの通貨・・・・ ATP
コラム: 発酵と腐敗
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III 環境と物質
13章 大気汚染と酸性雨
1 現在の環境問題の特色 2 硫黄酸化物汚染の実態
3 脱硫技術 4 窒素酸化物汚染の実態 5 低ノックス燃焼技術
6 脱硝技術 7 酸性雨
14章 オゾン層の破壊と地球の温暖化
1 オゾン層の破壊 2 地球の温暖化 3 砂漠化と土壌浸食
コラム: 温室効果ガス
15章 水質と土壌の汚染
1 水質・土壌汚染と公害病 2 有機塩素化合物
3 ポストハーベスト農薬
16章 エネルギー間題と環境
1 原子力発電とその問題点 2 省エネルギーの意義
3 身近な省エネルギー 4 身近た環境保全
17章 科学・技術への期待・・・・ エピローグにかえて
1 科学・技術の貢献 2 科学・技術の進歩における矛盾
3 日本の科学・技術の役割
以上の項目のうちの一部分を講義する
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