双胎間輸血症候群について

双胎間輸血症候群(以下TTTS)は一絨毛膜性双胎の約10%に発症する病気です。一絨毛膜性双胎とは、1つの胎盤を胎児二人が共有しているという特徴があります。このため、下記へ示す特殊な胎児循環となっています。


双胎間輸血症候群の発症原因

通常、胎児の血液は心臓から臍帯動脈を通じて胎盤に送られ、母体の血液との間で酸素や栄養分を受け取り、臍帯静脈を通じて胎児に戻ってきます。胎盤が一つの場合、右の図のように双子は胎盤を共有して成長しているため、発育に必要な臍帯動脈と静脈の先が吻合している部分が存在します。これらを「吻合血管」と呼びます。

Fetal & Neonatal Medicine vol2.から引用

つまり1絨毛膜性の双子は吻合血管を通じて血液の行き来が存在します。吻合血管を通じてお互いの血液がバランス良く行き来していれば問題ありませんが、何らかの理由で血液の循環バランスが障害されると、血液量の少ない児(供血児)と多い児(受血児)となります。これがTTTSです。供血児は循環血液量が不足し乏尿、羊水過少、体重減少、腎不全、胎児死亡などを起こします。また、受血児は多尿、羊水過多、うっ血性心不全、胎児死亡などを起こします。生存していても新生児期に死亡する危険性があります。かつて、無治療の時代は児死亡率80-90%であり、受血児の羊水除去を行っても児死亡率50-60%、生存児の神経学的後遺症(脳性麻痺など)発症率は最大で25%という疾患でした。

MEDICAL VIEW社 一絨毛膜双胎 基本からupdateまで




胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(以下FLP)について

上記のようにTTTSと診断された場合、児の予後が不良であり、また母体にとっても流産や早産に至る危険性が高い事から、日本では2002年からFLPが導入されました。現在では国内10施設で手術が可能となっています。図のように内視鏡を受血児羊水腔へ刺入し胎盤表面の吻合血管をレーザー凝固し遮断します。手術により、両児生存率70%以上、少なくとも一児以上の生存率90%以上、生存児の神経学的後遺症発症率は5%前後となっています。山口大学産科婦人科でも手術が可能です。

※手術に関する問い合わせ担当者 山口大学医学部附属病院 産科婦人科 助教 村田晋