当院では婦人科悪性腫瘍に対して、診断から治療まで包括的な医療を提供します。それぞれの患者さんの状態に応じて手術療法、化学療法、放射線療法などの治療法を適切に組み合わせた集学的治療を、過不足の無いように行うことを心がけています。判断が困難な症例などはカンファレンス等で、最新の知見や多数の医師の意見を取り入れながら方針を決定しています。
手術に関しては、当科には婦人科腫瘍専門医や産科婦人科内視鏡技術認定医が複数所属しており、低侵襲手術として早期子宮体癌に対する腹腔鏡下手術を積極的に導入しております。一方で進行症例に対しては手術前に化学療法を先行して手術を行う、あるいは他科医師と連携し拡大手術を行うなど、症例ごとに適切な手術方法の選択を行い、より良い治療になるよう取り組んでいます。
また最近山口大学医学部附属病院では遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の診療体制を整備し、BRCA遺伝子検査やそれに関わるカウンセリング、病的バリアント保有者に対するサーベイランスや予防的卵巣卵管切除術を実施できるようになりました。さらにがんゲノム医療連携病院として、がん遺伝子パネル検査が実施可能です。
当院は県内に2箇所ある総合周産期母子医療センターの一つであり、妊娠中に母体・胎児に起こる様々なトラブルに対応できる機能を有しています。例えば、妊娠中に起きる産科合併症である切迫流早産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、前置胎盤、胎児発育不全、多胎妊娠などの様々なハイリスク妊娠に対し、妊娠週数にかかわりなく対応しています。また、妊娠前から持病(高血圧症、糖尿病、脳血管疾患、甲状腺疾患、膠原病、てんかんなど)をお持ちのまま妊娠された妊婦さんの妊娠管理にも対応しています。必要に応じて循環器内科や消化器内科、内分泌内科、脳神経外科など、他科と連携して診療を行っています。
胎児については妊娠中に胎児超音波検査にて胎児スクリーニング検査を行なっています(ご要望により行わないこともあります)。それにより、時として胎児に先天性心疾患、消化器疾患、脳神経系の疾患、泌尿器疾患などの異常所見を認める場合もあります。必要に応じて染色体の検査などを行い、正確な胎児診断とご両親への十分な病状説明に努めています。出生後に当院での治療が難しいと予想される場合は、他県の専門機関を紹介させていただくこともあります。
上述の疾患の増悪などにより妊娠中に入院が必要となった場合は、MFICU(母体・胎児集中管理室)とNICU(新生児集中治療管理室)が協力して24時間体制で診療に当たっています。
双胎間輸血症候群に関してはこちら
不妊症、ホルモン異常、月経異常、子宮内膜症、子宮の先天奇形といった生殖領域の広範な問題に対応しています。
若年者の月経異常に関しては、分子生物学的手法を用いたDNAレベルでの高度な診断を独自に行っています。
不妊症では多岐にわたる不妊原因の正確な診断およびそれに基づいた治療を行っており、一般不妊治療のほか、腹腔鏡や子宮鏡などの内視鏡を用いた治療、さらには体外受精–胚移植といった生殖補助医療も積極的に行っています。さらに当科での研究結果から、卵の質を向上させる目的でメラトニンを投与し、良好な成績を得ています。