
研究室
★ 単結晶X線構造解析(SC-XRD)
・固体中で分子が規則的に配列している単結晶をつかって、三次元的な原子座標を得ることができます。金属錯体や超分子化合物などの構造を得るのに大変重要です。また、物性と構造の間にある相関を解釈するためにも不可欠です。
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★ FTIR
・汎用的な測定なため地味ですが、固体中における分子について様々な情報が得られます。特に分子間相互作用や分子骨格について、温度依存性(20-300
K)を評価することで重要な知見が得られる場合があります。単結晶XRDではちょっと手の届かないかゆいところをサポートしてくれます。
★ 電気物性測定
・直流2端子法電気伝導率測定:単結晶一粒に、導電性ペーストと金線を使って電気的回路として装置系とつなげます。顕微鏡をのぞきながらの細かい作業で大変で、米粒ひとつに絵や文字を書くような要領です。電子輸送は、固体中の分子間相互作用やパッキング様式を反映しやすいため、単結晶をつかって異方性を評価すると、構造と物性の相関など、いろいろと面白いことがわかってきます。
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・交流擬似4端子法インピーダンス測定:錠剤成型した固体試料の裏表に導電性ペーストを使って装置系とつなげます。単結晶よりもはるかに簡単ですが固体の構造を反映した測定ではなくなってしまいます。複素インピーダンスを測定することで、固体中の荷電粒子や分極の運動様について知ることができ、誘電率や交流伝導率などが得られます。
★ Polyoxometalate (ポリ酸)
私たちの研究室でよく扱う無機化合物です。金属と酸素が縮合してできる陰イオン性の分子で、組成や分子形状が異なる様々なものが存在しています。モリブデン、タングステン、バナジウムが主な骨格金属となりますが、ほかにもニオブやマンガン、鉄など様々な金属を骨格にしたポリ酸も報告されています。
一般的な合成では、水を溶媒としてpH、濃度、温度を変えることで様々なポリ酸を作り分けることができます。りん酸イオン、硫酸イオンなどのオキソ酸イオンを反応させると、これらイオンが核となってクラスターが形成します。オキソ酸イオンが{MoO3}によって取り囲まれた構造になり、ヘテロポリ酸と総称されます。骨格となるMoやWは+6価(最高酸化状態)、酸素配位子が-2価ですので{MoO3}はゼロ価、つまり、中心にあるオキソ酸イオンがポリ酸の価数になります。同じKeggin型でも、Si, S, P, B, Co(=X)など様々な元素がXO4n-の形で取り込まれ、分子形状はほとんど同じで価数が異なるクラスターになります。取り込まれるオキソ酸イオンの数は1つとは限らず、2、4、8個などの様々な構造が知られています。
ヘテロポリ酸反応条件次第では、金属核数が100を超える巨大な分子も得られ、フラーレンと類似した構造的特徴を持つ形状やドーナッツ型など、他の化合物では中々みられない特殊な形状を持つポリ酸もたくさん報告されています。
代表的なヘテロポリ酸の構造(青:骨格金属、白:酸素配位子、オレンジ:ヘテロ原子など、オキソ酸イオンは球で示してあります)
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[(SiO4)Mo12O36]4- [(PO4)Mo12O36]3- [(SO4)Mo12O36]2- (Keggin型) |
[(PO4)2Mo18O54]6- [(SO4)2Mo18O54]4- (Dawson型) |
[(HPO3)2(P2O7)Mo30O90]8- |
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[(PO4)5W30O90]15- (Preyssler型) 分子中央にカチオン(緑)を含む構造 |
{Mo132} C60フラーレンと幾何的に類似した構造 |
{Mo154} ドーナッツ型の形状 |
随時更新します。。。