患者様へ
消化器・一般外科
-はじめに-
当班では、食道・胃・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・膵臓・乳腺・ヘルニアなどを対象疾患として外科治療に取り組んでいます。近年では、これらの領域を更に細分化して、各臓器別に取り組んでいる施設や講座が多いですが、われわれは敢えて細分化せずに、幅広い知見とさまざまな手術手技を駆使できる消化器一般外科医を目指し、包括的な治療を提供できるように日々取り組んでいます。
また、われわれの器官病態外科学講座では、週2回の全体カンファレンスが開かれて、心臓外科医による心臓手術症例、血管外科医による血管手術症例、呼吸器外科医による呼吸器手術症例などが提示され、そこでわれわれの対象症例も提示します。近年の高齢化社会に伴い、心疾患や動脈硬化性疾患を有する患者の消化器手術症例が格段に増加してきています。そのような状況において、心臓疾患や血管疾患の専門医と密接な関係が構築されているという環境は、消化器外科医にとっては極めて安心できる体制であり、先述した患者さんに対する包括的な治療を実現できているという点が、他施設には無い、当講座ならびに当班の強みであると考えます。
-腹腔鏡手術を積極的に行っています-
腹腔鏡手術は従来の開腹手術と比較して、小さな傷で手術をすることが可能であり、整容性に優れ、術後の傷の痛みもより小さくすることができ、手術による生体へのダメージ(手術侵襲)を軽減することができるという利点があります。しかしながら、術式によっては難易度が高いため、一定の技術を有する外科医が施行する必要があり、それをサポートする体制も必要となります。当班では日本内視鏡外科学会技術認定医が在籍しており、ほぼ全ての腹腔鏡手術において執刀もしくは指導的助手として参加する体制を整えています。
われわれは2009年4月から難易度が高いとされている術式に対しても腹腔鏡手術を導入してきました。これは全国的にみると決して早い導入ではありませんが、例えば腹腔鏡下胃手術で習得した知見を腹腔鏡下大腸手術へ応用し、またその逆があり、また一方で鏡視下食道手術で習得した知見を腹腔鏡下ヘルニア手術へ応用し、またその逆があるなどして、シームレスに知識と技術と経験を活かすことで、それが相乗効果となって、既に現在では各領域で安定した手術成績を得ています。
【上部消化管領域】
主には食道疾患(食道癌、食道平滑筋腫瘍)、胃疾患(胃癌、GIST等の胃粘膜下腫瘍)が対象となります。手術療法においては先述の腹腔鏡を用いた手術を積極的に導入しています。
【下部消化管領域】
主には大腸癌が対象となります。上部と同様に、腹腔鏡を用いた手術を積極的に導入しています。
【肝胆膵脾領域】
肝臓においては、主に肝臓癌、転移性肝腫瘍が対象となります。胆道においては、主に胆道癌、胆石症が対象となります。膵臓においては主に膵臓癌が対象となります。脾臓においては、遺伝性赤芽球症、血液型不適合腎移植レシピエントなどが対象となります。胆嚢摘出術や脾臓摘出術においては、臍のみを切開して行う単孔式腹腔鏡手術を第一選択としています。
【乳腺】
乳癌が対象となります。乳房温存の適応があり、患者さんが希望されるのであれば、術後の残存乳房への放射線照射を承諾して頂ければ、乳房温存療法も可能です。脇の下のリンパ節を取る必要性においては、手術中に近赤外線光をあててリンパの流れを映し出し、一部のリンパ節のみを摘出して顕微鏡検査へ提出し、癌細胞の有無を調べるセンチネルリンパ節生検を行っています。
【ヘルニア(脱腸)】
主には鼠径(ももの付け根付近)ヘルニアが対象となります。腹腔鏡手術を行うか、従来法(ももの付け根付近を切開する)を行うか、年齢を考慮しつつ、患者さんと協議して決定いたします。
-化学療法(抗癌剤治療)も行っています-
癌治療法は、手術療法のみならず、化学療法、放射線治療が有効な場合があります。手術療法単独では十分な効果が期待できない場合には、術前化学療法や術後補助化学療法を行います。われわれは手術のみを行っているわけではなく、術前療法から術後療法、場合によっては終末期緩和医療まで可能な限り関わらせて頂きます。
何か御不明な点がありましたら、いつでも下記まで御連絡下さい。
連絡先
山口大学大学院医学系研究科 器官病態外科学(第一外科)
原田 栄二郎(はらだ えいじろう)
消化器外科専門医、指導医
内視鏡外科技術認定医