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小児外科

小児外科でよく診る疾患

  • 鼠径部から陰嚢にかけて腫れていませんか?(男児)
  • 鼠径部から陰唇にかけて腫れていませんか?(女児)

    【鼠径ヘルニア】
     泣いたり、きばったりしたときに鼠径部から陰嚢(女児では外陰部)にかけて膨隆を認める疾患で、俗にいう脱腸です。小児ではもっとも頻度が高く、赤ちゃんの30人にひとりは鼠径ヘルニアがあるといわれています。 胎児期にはだれにでもお腹の中から鼠径部へ伸びる袋(腹膜鞘状突起)が存在します。 この袋は本来なら出生前後に閉鎖します。これが閉鎖せずにお腹の中と連絡した袋が遺残するため、 この袋の中に腹腔内臓器(小腸など)が脱出するようになることが小児の鼠径ヘルニアの原因です。 鼠径ヘルニアは嵌頓を起こす可能性がありますので、診断がつき次第手術の予定を組むのが一般的です。嵌頓とは腸や卵巣がヘルニアの袋にはまり込んで抜けなくなってしまった状態で、嵌頓するとまず患児は不機嫌になり、泣きます。鼠径部を見ると腫れており、そこを触ると痛がります。 嵌頓状態が長時間続くと腸が腐ってしまう危険性があるので、嵌頓の際は早期に病院で還納する必要があります。嵌頓を起こした時や、卵巣が脱出したままの状態などの時は必要に応じて新生児期に手術を行うこともあります。


  • ■陰嚢が大きく腫れていませんか?

    【陰嚢水腫】
     腹膜鞘状突起に腸などの腹腔内臓器ではなく水が貯まって陰嚢が腫れたものが陰嚢水腫です。ヘルニアのように嵌頓はおこしません。1才までは自然に治りますので何もせずに経過をみますが、時に、鼠径ヘルニアと合併していることもありますので、見つけたら一度小児外科を受診されることをお勧めします。
    陰嚢水腫は放置していても問題はありません。しかし患児の心理、精神状態の変化を考慮すると、小学生にあがる頃までに水腫が治っていなければ手術を行った方が良いでしょう。


  • ■泣くとおへそが飛び出す(膨らむ)ことはありませんか?

    【臍ヘルニア】
     臍部にある臍輪と呼ばれる筋膜欠損部が閉鎖しないために同部から腸などが脱出して臍部が膨隆するものです。 臍ヘルニアでは嵌頓はまれでほとんどありません。 また、臍輪は2歳頃までは瘢痕収縮して自然に閉鎖する可能性があり、一般的には2歳までは経過観察を行い、2歳をこえても閉鎖しないものは手術適応となります。
     最近スポンジによる圧迫療法も行っています。しかしこの方法を行えば必ず臍ヘルニアが治癒するというものではありません。臍の皮膚伸展、臍輪の拡大を予防し、手術が必要となった際に形成を容易にします。


  • ■精巣(睾丸)は袋(陰嚢)の中にありますか?

    【停留精巣(睾丸)・移動精巣(睾丸)】
     陰嚢(精巣の入っている袋)の中に精巣が降りてきていなかったり、消失していたりするものです。停留精巣、特に腹腔内精巣は癌化の可能性も指摘されており、停留精巣に悪性腫瘍が発生する確率は正常精巣の数十倍といわれています。1才までは自然下降が期待できますが、それ以降は期待できません。そのため1才前後が手術時期となります。ただし正常の精巣でも刺激、緊張、寒さなどで一時的に精巣が上がっていることがあります。もし陰嚢内に精巣がない時は、しばらくの間観察してもらい、おふろや、寝ているときに陰嚢内に精巣が下がっているなら、ほぼ問題はないと考えて良いでしょう。

小児外科の特徴

  • 小児の一般外科
  • 年齢特異性から発生した診療・学問体系
  • 臓器特異性が希薄な専門領域
  • 広範囲な臓器にわたる外科修練が必要
  • 小児の呼吸器疾患、腹部疾患で手術が必要な疾患がすべて小児外科の取り扱う領域です。主には先天性疾患や小児腫瘍などが当てはまります。

 小児外科領域では成人とは異なった小児特有の手術や管理が必要となります。 山口県内に小児外科を専門に取り扱っている施設は数カ所しかなく当院はその内の1つです。山口県ではこのような疾患は小児科を通じて紹介されることがほとんどであり、また術後の経過観察を含めて小児科、新生児科との連携が重要です。

 当院の小児科、新生児科は県内で最も充実した施設の1つであり、それらの科と連携をとりながら新生児疾患、悪性腫瘍を含め小児外科疾患のほぼ全てに対応可能です。当科で取り扱えないもの(例えば肺移植、小腸移植など)に関してはこれがきちんとできる施設への紹介をしています(そのような施設は県内にはなく県外となります)。

 このように当科においては小児科、新生児科など他科と連携をとりながら患児にとって最良の小児外科治療ができるようにしています。

小児外科の研修について

 小児外科疾患の治療においては、臓器特異性が希薄な専門領域であるが故に広範囲な臓器にわたる外科修練が必要です。また、対象となる疾患が先天性疾患で成人外科にはない独特の手術が施行されることがあります。 よって、小児外科疾患を治療していく上で小児外科専門施設での臨床研修は必須であり、また、 小児外科専門医を取得するためには小児外科認定施設において一定期間の研修を行うことが必要です。 ただし、一般成人外科での基本的技術や周術期管理の習得も必要不可欠であり、 より良い小児外科医となるためには小児外科のみの経験だけではなく成人外科の十分な研修も重要となります。

 現在の当科での小児外科の研修方針は、まず成人外科の各グループ隔てなく全ての研修を行います。 外科専門医を得た後、他大学小児外科や小児外科専門施設で小児外科専従の臨床研修を行うと共に小児外科専門医取得に必要な研修指数を獲得します。その後当科において小児外科中心の診療、研究に従事していくようになります。

 当科での小児外科診療は宇部市近郊のヘルニアなど小児外科一般疾患の治療はもちろんのこと、大学病院は小児科、新生児科が充実しているので県内各地から小児外科疾患が紹介されてきます。例えば小児悪性腫瘍は手術のみではなく化学療法や放射線治療を含めた集学的治療が必要であり、当院では小児科の先生と連携をとりながらこれが可能です。また、小児外科疾患患児には他の小児科疾患を合併している者もおり、これらの治療においても小児科の先生との連携が重要です。 このように当科では小児科、新生児科をはじめ他科との連携をとりながら的確な小児外科診療を目指し行っています。