堤 宏守研究室(バイオ機能高分子)

ガラス転移点


■ここでは,ポリマー電解質のイオン輸送に大きな関わりのあるポリマー鎖の運動性やガラス転移点について説明します。
■ガラス転移点とは?
 物質の状態が,液体→固体へと変化する際に,通常は,固体状態としては,結晶になる場合が一般的です。例えば,水を冷やしていくと,その固体,すなわち氷になりますが,氷は水分子が規則正しく並んだ結晶構造をとります。
 ところが,物質の中には,液体の状態から冷却しても結晶化せずに,液体のような分子配列がランダムなまま,固体になり流動性が無くなる場合があります。これが,ガラスと呼ばれる状態です。この液体からガラス状態に変化するところの温度をガラス転移点と呼びます。
 ガラスを作るには,結晶化の時間を与えないぐらい急速に冷却するなどの方法により行われることもあります。
 ポリマーの場合には,分子そのものの長さが長いために,結晶化できずに固体状態になる場合が多く,ガラス状態になる場合が良くみられます。また,ポリマーの場合には,液体(溶融状態)から,ゴム状態を経由してガラス状態になります。

■この図は,比容(単位重量あたりの体積)と温度の関係を図示したものです。結晶化するものは,図中の赤い破線のように相転移温度(ここでは凝固点あるいは融点)の前後で大きく比容が変化しますが,ガラスになる場合には,温度に伴う比容の変化は,温度変化に伴う変化率は変わるものの,連続的に起こります。(図中の黒い実線)
 例えるならば,液体状態の分子が温度低下に伴い,運動性を失い,その場に留まるようになった,というイメージでしょうか。
物質の温度変化に伴う比容の変化 模式図
■ポリマー鎖の運動性とガラス転移点の関係
 ガラス転移点前後で,ポリマー鎖の運動性は,どのように変わるでしょうか。
 ガラス状態
■ポリマー電解質の性能とガラス転移点は,どのような関係にあるのでしょうか?