教授挨拶

チームAMEC3

 皆さん,こんにちは。
 山口大学病院 先進救急医療センターを代表してご挨拶申し上げます。
 私たちの救命救急センターは,タイプを表すなら「高度救命救急センター」,そして文部科学省からいただいた正式名称は「先進救急医療センター」となります。1999年の開設当時,医局で英会話を指導してくれたクリステンが,英語名称を考案してくれました。Advanced Medical Emergency & Critical Care Center (AMEC3),略して「エーメック・スリー」と呼ばれています。当初は,薄いグリーンのユニフォームでしたが,2011年4月から紺色にリニューアルしました。それというのも1月からドクターヘリが始まり,そのフライトスーツも紺色ですので,ドクターもナースも紺でユニフォームを統一しました。その結果,救急医,救急看護師,フライトドクター,フライトナースのより一層の連帯感を引き出してくれています。さらに2016年6月からフライトスーツのデザインが一新されました。背中に「山口大学」の文字を背負っています。さらにさらに更新されて2021年から背中に英語名を背負い,着心地のよいものに生まれ変わりました。
 AMEC3では,年間約1,400名の患者を治療しています。その29%が中枢神経疾患,23%が心血管疾患,残りが院外心停止,呼吸不全,重症感染症,外傷などになります。前2者は,それぞれ脳神経外科医,循環器内科医が主に主治医となり,私たちは担当医(集中治療医)として全身管理のサポートをします。残りの傷病については,私たちが主治医となって患者を治療します。平日の午前8時30分からのカンファレンスでは,全患者の病態を中心にした熱いディスカッションが交わされます。巨大スクリーン2枚に展開される画像と血液データは対策本部で戦略を練っているような感じです。看護師,薬剤師,理学療法士,臨床工学技士,MSWからも意見が飛び交います。『主治医チーム』と『当番チーム』に分かれて勤務しており,主治医チームには,原則,専門医取得前の救急科専攻医が当たります。当番チームは,指導医クラスの1直医師と指導医取得前の2直医師の2名でコンビを組み,2交替制で勤務しています。救急医学会と集中治療医学会の資格保持者が多数いるため患者やその家族への説明が丁寧で行き届いていると高い評価を受けています。診療をチームで支援するかたわら主治医としての責任感を育む指導体制となっています。救急科専門医の基幹医療施設になっています。これまでに福山市民病院,山形大学,横浜労災病院などから専攻医が研修にきました。また特定看護師研修,救命士研修にも力を入れています。
 AMEC3のドクターは,何らかのサブスペシャリティーをもつように研修します。内科系2年間,外科系2~3年間の研修を行います。サブスペシャリティーをもつことで,救急・集中治療に厚みが増します。サブスペシャリティーの学会への参画を期待します。また,患者を超急性期に限らず,長い時間軸で治療する修練になります。これまでに消化器内科,循環器内科,呼吸器内科,小児科,外科,整形外科,麻酔科,放射線科,保健行政で研修してきています。「救急医療のできるサブスペシャリティー医を目指すか」,「サブスペシャリティーのできる救急医を目指すか」迷うかもしれません。その場合,遠慮なくご相談ください。私たちは,共にしばらく救急・集中治療を行えば,「チームAMEC3」と考えます。また体調不良,出産・育児や介護のために夜勤ができない,フルに働けないという医師の一人ひとりと話し合いを行い,双方にとって最適な働き方を常に模索しています。
 私の好きな漫画に「サイボーグ009」(石ノ森章太郎)があります。9人の個性豊かなサイボーグ戦士たちが力を合わせ,敵と戦う姿は,重症患者に立ち向かう「チームAMEC3」と合い通じるところがあります。ドクター,ナース,多職種の技士,消防隊員,ドクターヘリ運航スタッフ,医療事務職員らが力を合わせ,同じ方向に向かっていかなければ良い救急・集中治療は実施できません。これからも私たちは一人ひとりの個性を大切にしながら最大限の力を集結できるチーム医療を育んでいくつもりです。そして真の敵は何なのかを常に考え続けています。
 2019(令和元)年6月からA棟1階にAMEC3は移動し,初療室と集中治療室が同じフロアになりました。集中治療室は救命救急入院料4を算定する20床です。すなわち全て院外から搬送されてくる重症患者を受け入れる体制が整っています。また同じ階のオーディトリアムは発災時には院内のトリアージポストになります。最重症患者の受け入れの際には屋上へリポートを使用し,AMEC3は山口県内の救急医療の押しも押されもせぬ最後の砦になっています。2020年から始まったCOVID-19パンデミックでも県内広域から人工呼吸患者の多くを引き受けてきました。これからも山口県民のため,そして世界中の重症患者の救命のため診療・教育・研究に取り組んでいきます。
 最後に,岩国医療センター,徳山中央病院,県立総合医療センター,山口労災病院は「山口大学救急科専門いしんプログラム」の県内連携施設で,AMEC3で育った救急医が活躍中です。AMEC3はこれらの病院と連携しながら山口県の救命救急医療をよりよくしていきます。


山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター
鶴田 良介