日本の国際美術展(一)
横浜トリエンナーレ
◆授業の目標
横浜トリエンナーレ2001, 2005, 2008を比較する。
企画者、テーマ、参加作家の関係を理解する。
1.横浜トリエンナーレ2001
テーマ:メガウェイヴ−新たな総合に向けて
アーティスティック・ディレクター:
河本信治(京都国立近代美術館主任研究官)
建畠晢(多摩美術大学教授)
中村信夫(現代美術センターCCA北九州 ディレクター)
南條史生(インディペンデント・キュレーター)
会期:2001年9月2日〜11月11日
会場:パシフィコ横浜展示ホール、赤レンガ1号倉庫、横浜開港資料館、横浜市開港記念会館、クィーンズスクエア横浜、神奈川県民ホールギャラリーほか
1−2.作品紹介
1. 椿昇+室井尚《インセクト・ワールド、飛蝗》 2001年 写真:黒川未来夫
2.横浜トリエンナーレ2005
テーマ:アートサーカス[日常からの跳躍]
総合ディレクター:
川俣正(美術家)
キュレーター:
天野太郎(横浜美術館学芸課長補佐)
芹沢高志(P3 art and environment ディレクター)
山野慎悟(ミュージアム・シティ・プロジェクト運営委員長)
会期:2005年9月28日〜12月18日
会場:横浜市山下ふ頭3号、4号上屋ほか
2−2.作品紹介
2. ルック・デルー(ベルギー)《スパイバンク》 1999/2005年
3. ビュラン・サーカス・エトカン(フランス)公演風景
4. 高松次郎《工事現場の塀の影(再現)》 1971/2005年
5. へディ・ハリアント(インドネシア)《私のお母さんはどこ?》 2005年、(部分)
7. ソイ・プロジェクト/アンクリット・アッチャリヤソーポーン(タイ)展示風景
8. ソイ・プロジェクト/アンクリットの部屋からウィスットの部屋へ
9. ソイ・プロジェクト/ウィスット・ポンニピット(タイ)展示風景
10. ソイ・プロジェクト/ノート=ウドム・テーパーニット(タイ)展示風景
11. 照屋勇賢《告知―森》 2005年、(作業風景)、(部分)
12. ロングマーチ/邱志傑(チョウ・ジュージェ、中国)《慢慢来》 2005年
13. アルマ・キント(フィリピン)《アイアヤム》 2005年
14. 3号上屋会場風景
15. 4号上屋会場風景
16. 堀尾貞治+現場芸術集団「空気」《サムホール千点の部屋》 2005年、(部分)
17. 4号上屋会場風景
18. KOSUGE1+16+アトリエ・ワン+ヨココム《アスレチッククラブ4号プロジェクト》 2005年
3.横浜トリエンナーレ2008
テーマ:タイムクレヴァス
総合ディレクター:
水沢勉(神奈川県立美術館企画課長)
キュレーター:
ダニエル・バーンバウム(シュテーデル造形美術大学学長)
フー・ファン(ビタミン・クリエイティヴ・スペース・アーティスティック・ディレクター)
三宅暁子(現代美術センターCCA北九州共同創設およびプログラムディレクター)
ハンス・ウルリッヒ・オブリスト(サーペンタイン・ギャラリー展覧会プログラム共同ディレクター)
ベアトリクス・ルフ(クンストハレ・チューリッヒディレクター)
会期:2008年9月13日〜11月30日
会場:新港ピア、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)、横浜赤レンガ倉庫1号館、三溪園、大さん橋国際客船ターミナル、ランドマークプラザ、運河パークほか
3−2.作品紹介
1. 新港ピア
2. ヨナタン・メーゼ(東京生まれ、ドイツ在住) 《ドクター・ノー・メタボリズム・イン・ムーミンジム・ライク・ソルジャーフラッシュブルー・デ・ミン》(ベイビーキングコングはフィントマジムに帰る、ありがとう…1912-2012) 2008年、(部分1)、(部分2)、(部分3)
3. ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス(スイス)《ネズミとクマのフィルムの一部》 2008年
4. ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス《ネズミとクマ》 2008年
5. ペドロ・レイエス(メキシコ)《ベイビー・マルクス》 2008年 、(部分1)、(部分2)
6. シルパ・グプタ(インド)《見ざる、聞かざる、言わざる》 2008年、(部分)
7. ミケランジェロ・ピストレット(イタリア)《17マイナス1》 2008年、(部分)
8. 日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)
9. ヘルマン・ニッチュ(オーストリア)展示風景
10. ヘルマン・ニッチュ《オージー・ミステリー・シアター》
11. ヘルマン・ニッチュ《アクション96から122》 1996-2005年(部分)
12. ヘルマン・ニッチュ《アクション122》 2005年/《アクション123》 2007年
13. ヘルマン・ニッチュ《アクション1962-2003》1962-2003年
14. ポール・マッカーシーとデーモン・マッカーシー(USA) 《カリビアン・パイレーツ・パイレート・パーティ/ハウスボート・パーティ》 2001-05年 、(部分1)、(部分2)
15. 横浜赤レンガ倉庫1号館
16. 映像資料展示/土方巽《肉体の叛乱》 1968年
17. テレンス・コー(中国)《海辺の少年》 2008年 、(部分1)、(部分2)
18. ミランダ・ジュライ(USA)《廊下》 2008年、(部分1)、(部分2)、(部分3)
20. 中矢芙二子《雨月物語―懸崖の滝 Fogfalls #47670》 2008年、(部分)
21. 内藤礼《無題(母型)》 2008年
22. 旧東慶寺仏殿
23. ホルヘ・マキとエドガルド・ルドニツキー(アルゼンチン)《薄明》 2008年
24. 大さん橋国際客船ターミナル(設計:ファッシド・ムサヴィ、アレハンドロ・ザエラ・ポロ)
25. H BOX(設計: ディディエ・フィウザ・フォスティノ)、(別角度)
26. ヤエル・バルタナ(イスラエル)《白昼夢・悪夢》 2007年、(部分1)、(部分2)
27. 横浜みなとみらい夜景
28. マイケル・エルムグリーン(デンマーク生まれ)&インガー・ドラッグセット(ノルウェー生まれ) 《落っこちたら受けとめて》 2008年、(部分)
29. 運河パーク/インフォメーションセンター「イエノイエ」(設計:平田晃久)
30. 「イエノイエ」展示風景
4. 比較
4−1.企画体制の比較
2001=
アーティスティック・ディレクター:河本信治(京都国立近代美術館主任研究官)/建畠晢(多摩美術大学教授)/中村信夫(現代美術センターCCA北九州 ディレクター)/南條史生(インディペンデント・キュレーター)
→日本人男性4人の並置
2005=
総合ディレクター:川俣正(美術家)/キュレーター:天野太郎(横浜美術館学芸課長補佐)/芹沢高志(P3 art and environment ディレクター)/山野慎悟(ミュージアム・シティ・プロジェクト運営委員長)
→1人の美術家の下に3人のキュレーター(全員日本人男性)
2008=
総合ディレクター:水沢勉(神奈川県立美術館企画課長)/キュレーター:ダニエル・バーンバウム(シュテーデル造形美術大学学長)/フー・ファン(ビタミン・クリエイティヴ・スペース・アーティスティック・ディレクター)/三宅暁子(現代美術センターCCA北九州共同創設およびプログラムディレクター)/ハンス・ウルリッヒ・オブリスト(サーペンタイン・ギャラリー展覧会プログラム共同ディレクター)/ベアトリクス・ルフ(クンストハレ・チューリッヒディレクター)
→1人の統括キュレーターの下に5人のキュレーター(国際チーム、女性2名含む)
4−2.企画テーマの比較(独自解釈による)
2001=メガウェイヴ−新たな総合に向けて
→国際美術展の開催によって、日本から世界に向けて美術の大きな波を起こそう。
=日本は美術大国だ。
2005=アートサーカス[日常からの跳躍]
→現代美術展はサーカスのようなもの。非日常的な体験をしてみませんか?
=千客万来。たくさんのお客さんに楽しんで欲しい。
2008=タイムクレヴァス
→現代美術展が非日常の体験であることには賛成だが、もう少し文化の薫り高いものしたい。日常の「深淵」をのぞき込むような体験と言うべきだ。
=日本の国際美術展の知的レヴェルの高さを世界に印象づけなければ、一流の美術家を海外から呼び続けられない。
5.まとめ
・2001, 2005, 2008の比較
―企画体制は、男女共同参画、国際化の方向へ
―テーマも成熟の傾向
―作品の傾向は、各回ごとに印象が大きく異なる
・企画者、テーマ、参加作家の関係
―企画者の指名も、テーマの設定も、参加作家の選定も、それぞれ、それまでの経緯との対話になっている
―独自性(時代に左右されないもの)と時代性(その時点で導入や利用が可能なもの)の2つの観点から分析する
―他の国際美術展と比較したとき、「横浜らしさ」「日本らしさ」が見える
◆過去の特殊講義へのリンク
・特殊講義2009(前期) 事例研究(四)横浜トリエンナーレ
・特殊講義2008(前期) 事例研究(四)横浜トリエンナーレ
・特殊講義2007(前期) 国際美術展の歴史(二)アジア
・特殊講義2006(前期) 横浜トリエンナーレ二〇〇五紹介/横浜トリエンナーレをめぐって
・特殊講義2005(後期) 横浜トリエンナーレ2005