日本の国際美術展(四)
横浜トリエンナーレ


授業の目標

横浜トリエンナーレ2011 最新情報の紹介。

越後妻有、瀬戸内、福岡、横浜を比較する。


1. 横浜トリエンナーレ2011

 横浜トリエンナーレとは…

 2001年に開始、3年に1回開催。今年4回目

第1回(2001年) メガ・ウェイヴ

第2回(2005年) アート・サーカス

第3回(2008年) タイム・クレヴァス

第4回(2011年) アワー・マジック・アワー

 横浜トリエンナーレ2011基本情報

会場:横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫

会期:2011年8月6日〜11月6日(93日間)

公式サイト: http://yokohamatriennale.jp/ ※授業で上映した公式サイトのスライド

アーティスト:リナ・バネルジー/マッシモ・バルトリーニ/ジェイムス・リー・バイヤース/ピーター・コフィン/オレリアン・フロマン/ライアン・ガンダー/ヘンリック・ホーカンソン/N.S. ハルシャ/池田学/泉太郎/シガリット・ランダウ/クリスチャン・マークレー/森靖/リヴァーネ・ノイエンシュワンダー/ジュン・グエン=ハツシバ/カールステン・ニコライ/スーザン・ノリー/ウィルフレド・プリエト/スッシリー・プイオック/ウーゴ・ロンディノーネ/佐藤允/杉本博司/孫遜(スン・シュン)/田名網敬一/田口和奈/田中功起/アピチャッポン・ウィーラセタクン/八木良太/尹秀珍(イン・シウジェン)/横尾忠則(30名)

2011年3月現在

リヴァーネ・ノイエンシュワンダーほかの作品画像

開催概要と企画概要

市長あいさつの要旨

総合ディレクターあいさつの要旨

アーティスティック・ディレクター「タイトルについて」要旨


2. 横浜トリエンナーレ2001〜2008

 2-1. 横浜トリエンナーレ2001

テーマ:メガウェイヴ−新たな総合に向けて

アーティスティック・ディレクター:
  河本信治(京都国立近代美術館主任研究官)
  建畠晢(多摩美術大学教授)
  中村信夫(現代美術センターCCA北九州 ディレクター)
  南條史生(インディペンデント・キュレーター)

会期:2001年9月2日〜11月11日

会場:パシフィコ横浜展示ホール、赤レンガ1号倉庫、横浜開港資料館、横浜市開港記念会館、クィーンズスクエア横浜、神奈川県民ホールギャラリーほか

公式サイト: http://yokohamatriennale.jp/2001/

椿昇+室井尚《インセクト・ワールド、飛蝗》 2001年


 2-2. 横浜トリエンナーレ2005

テーマ:アートサーカス[日常からの跳躍]

総合ディレクター:川俣正(美術家)

キュレーター:
  天野太郎(横浜美術館学芸課長補佐)
  芹沢高志(P3 art and environment ディレクター)
  山野慎悟(ミュージアム・シティ・プロジェクト運営委員長)

会期:2005年9月28日〜12月18日

会場:横浜市山下ふ頭3号、4号上屋ほか

公式サイト: http://www.yokohamatriennale.jp/2005/jp/

ルック・デルー(ベルギー)《スパイバンク》 1999/2005年

ビュラン・サーカス・エトカン(フランス)公演風景

KOSUGE1+16+アトリエ・ワン+ヨココム《アスレチッククラブ4号プロジェクト》 2005年


 2-3. 横浜トリエンナーレ2008

テーマ:タイムクレヴァス

総合ディレクター:水沢勉(神奈川県立美術館企画課長)

キュレーター:
   ダニエル・バーンバウム(シュテーデル造形美術大学学長)
   フー・ファン(ビタミン・クリエイティヴ・スペース・アーティスティック・ディレクター)
   三宅暁子(現代美術センターCCA北九州共同創設およびプログラムディレクター)
   ハンス・ウルリッヒ・オブリスト(サーペンタイン・ギャラリー展覧会プログラム共同ディレクター)
   ベアトリクス・ルフ(クンストハレ・チューリッヒディレクター)

会期:2008年9月13日〜11月30日

会場:新港ピア、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)、横浜赤レンガ倉庫1号館、三溪園、大さん橋国際客船ターミナル、ランドマークプラザ、運河パークほか

公式サイト: http://www.yokohamatriennale.jp/2008/ja/

ミケランジェロ・ピストレット《17マイナス1》(部分)

ヘルマン・ニッチュ《アクション1962-2003》 1962-2003年

中矢芙二子《雨月物語―懸崖の滝 Fogfalls #47670》

マイケル・エルムグリーン&インガー・ドラッグセット《落っこちたら受けとめて》


3. 横浜トリエンナーレ 企画テーマの推移の読解 ※「→」以下は、藤川による解釈

2001=メガ・ウェイヴ−新たな総合に向けて
 →国際美術展の開催によって、日本から世界に向けて美術の大きな波を起こそう(=日本は美術大国だ)。
2005=アート・サーカス[日常からの跳躍]
 →現代美術展はサーカスのようなもの。非日常的な体験をしてみませんか?(=千客万来)
2008=タイム・クレヴァス
 →非日常的体験とはサーカスというより、日常の「深淵」をのぞき込むこと(=知的レヴェルの高さを世界に印象づけなければ、一流の美術家を海外から呼び続けられない)。
2011=アワー・マジック・アワー−世界はどこまで知ることができるか?
 →「不思議」をキーワードに、レヴェルを保ちつつ、地元市民のもの(私たちのもの)へ


4. 日本の国際美術展(中間まとめ)

「朝日新聞」はじめてのビエンナーレ 2011年5月16日(月)付け

(概要)
ビエンナーレは2年に1度、トリエンナーレは3年に1度
ヴェネツィア・ビエンナーレは「水の都」が文化による活性化を目指したもの
万博や五輪に例えられる
ヴェネツィア映画祭も同じ財団による運営
もう一方の雄が「ドクメンタ」。1人の企画者が巨大テーマ展を統括する。
「国際化時代に国別は古い」←→「民族的な作品が出やすく異文化交流に有意義」
100年続いた理由/アジアなどで増えてきた理由
「先端の美術動向が分かり、人と情報が集まる」
「観光や経済効果への期待」
越後妻有は日本独自


 4-1. 日本の国際美術展 越後妻有、瀬戸内、福岡、横浜の比較

  ・開催主体

越後妻有:新潟県、6市町村
瀬戸内:香川県、直島福武美術館財団
福岡:福岡アジア美術館、西日本新聞社、TVQ九州放送
横浜:横浜市、 NHK 、朝日新聞
 ※01〜08年 国際交流基金

  ・開催地域

越後妻有:里山
瀬戸内:里海
福岡:都市/アジアの玄関口
横浜:都市/日本を代表する文化芸術創造都市

  ・企画者

越後妻有:北川フラム
瀬戸内:北川フラム
福岡:福岡アジア美術館学芸員
横浜:毎回変更

  ・開始時期

越後妻有:2000年から 2009年に第4回展
瀬戸内:2010年から まだ1回目
福岡:1979年から トリエンナーレになったのは1999年
横浜:2001年から 2011年に第4回展


5. まとめ

 ・横浜トリエンナーレ2011

―会期:8月6日(土)〜11月6日(日)

―第4回目

―世界や日常の不思議をテーマに、現代美術から伝統美術まで

 ・越後妻有、瀬戸内、福岡、横浜

―地方からの文化発信

―国際交流と地域活性化

―この場所でしか見られない作品(サイト・スペシフィック)


過去の講義ノートへのリンク

二〇一〇年前期 <第六講> 日本の国際美術展(一)横浜トリエンナーレ

二〇〇九年前期 <第四講> 事例研究(四)横浜トリエンナーレ

二〇〇八年前期 <第六講> 事例研究(四)横浜トリエンナーレ

二〇〇七年前期 <第二講> 国際美術展の歴史(二)アジア

二〇〇六年前期 <第三講> 横浜トリエンナーレ二〇〇五紹介/<第四講> 横浜トリエンナーレをめぐって

二〇〇五年後期 <第六講> 横浜トリエンナーレ2005


0. 平川典俊レクチャー(5/24)

平川典俊レクチャー YCAMプレスリリース@

木漏れ日の向こうに

   美術家・平川典俊
   作曲家・ミヒャエル・ローター
   ダンサー・安藤洋子

会期:2011年5月28日(土)〜8月21日(日)

会場:山口情報芸術センター スタジオB

入場無料

映像・音響・身体表現が融合した新しい芸術表現の可能性を探る

アーティスト・ファイルG 平川典俊

平川典俊レクチャー YCAMプレスリリースA

木漏れ日の向こうに

  ギリシャ哲学における、あらゆる存在の基底となる原初的な概念 〈ピュシス〉=根源的なエネルギーをもとに、複数の人間の意識が調律し感化して、人間の持つ肯定的な存在をそれぞれが内包していくインスタレーション。
  孤立する一人の人間、一人のミュージシャン、そして架空の一人の人間(観客)が暗闇の中で希求する、ある未来への予感がお互いに影響し合い、一つの循環を生む装置(インスタレーション)として機能します。
  中継点にいる一人の人間の意識の変化 と、精神的なエネルギーの発露とその過程を、異なる表情をもった3つの空間として会場に構成。


平川典俊レクチャー 「覚道によるリアリティの獲得―自 由意志の創造を通じた人間自主の確立」

―共有される商品としての価値体系の中でしかアートを機能させないという内容操作がおこなわれている

―そもそもアートは個人との内面的対話によってその機能が確立していく

―制度がそこに関係していくことによって個人との対話が可能になるものではない

―アートという言葉を使い、意図的に美術という言葉を避ける

―アートは日本や中国で言う「道」という概念に非常に近い

―「魂」というものの存在に目を向ける

―「今、ここ」の意味が変化していくことを理解するということ