研究案内

心臓リハビリテーショングループ

メンバー

立石 裕樹
藤田 美穂

院内心臓リハビリテーションチーム
循環器病棟看護師 6名
リハビリテーション部 3名
栄養治療部 3名
薬剤部 3名
患者支援センター

心臓リハビリテーションとグループの活動について

心臓リハビリテーションとは、“心血管疾患患者の身体的・心理的・社会的・職業的状態を改善し、基礎にある動脈硬化や心不全の病態の進行を抑制あるいは軽減し、再発・再入院・死亡を減少させ、快適で活動的な生活を実現することを目指して、個々の患者の「医学的評価・運動処方に基づく運動療法・冠危険因子是正・患者教育およびカウンセリング・最適薬物治療」を多職種チームが協調して実践する長期にわたる多面的・包括的プログラム”と心臓リハビリテーション学会により定義されております。
そもそも1960年代の欧米における黎明期の心臓リハビリテーションとは、心疾患治療による長期安静臥床が招いた身体デコンディショニングに対する「早期離床と社会復帰を目指す機能回復訓練」が主な目的でした。しかし、その後、退院後に外来で実施される包括的心臓リハビリテーションプログラムの効果が明らかにされるとともに、心臓リハビリテーションの概念が、現在のような「QOLと長期予後の改善を目指す疾病管理プログラム」あるいは「循環器予防介入」へと大きく変化してきました。
当院でも、2010年に心臓血管手術後早期離床を目的に心大血管リハビリテーション料算定が開始されましたが、当初は主に早期離床を目的としたものでした。2016年度より心筋梗塞リハビリパスの作成を行うことを皮切りに疾病管理のための包括的多職種介入が開始され、2017年より経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)の周術期疾病管理のための多職種ミーティングを立ち上げ、2018年度より循環器病棟における多職種ミーティングを定期開催するに至っております。それに伴い、心大血管リハビリテーション料算定件数も次第に増加傾向にあり、より多くの患者さまへ心臓リハビリテーションを提供できるようチーム一丸となって活動しております。
現在、我々は、心不全や心筋梗塞などの心疾患を発症し、当院に入院された患者様を対象に、早期離床と運動耐容能改善を目標としながら、心疾患の病期にあわせた疾病管理のための指導・教育を行い、家庭・社会復帰に向けた環境調整などの包括的な多職種介入を行っております。また、さまざまな病期にあわせた症状(身体苦痛)緩和、心疾患にまつわるさまざまな苦痛の緩和を目指して院内緩和ケアチームと連携して緩和ケアも行っております。院内心臓リハビリテーションチームの構成は2016年の発足当初は医師、循環器病棟/救急病棟看護師と理学/作業療法士のみでしたが、現在では管理栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーに加えて、最近では院内緩和ケセンターのスタッフにも参加していただき、なかなかの大所帯となっております。

2016年発足当初から、2020年度までは、当科医師は立石(平成13年卒)のみの一人所帯でありましたが、2021年度より藤田 美穂(平成29年卒)が配属されました。力強い仲間も加わり、心臓リハビリテーション診療と並行して、包括的心臓リハビリテーションの効果の評価に関する研究を進めていきたいと考えております。

心臓リハビリテーショングループの研究について

リハビリテーションの語源はラテン語でre-(再び)、habilis(適した)、すなわち「再び適した状態になること」という意味とされているように、心不全を代表とする心疾患に対するリハビリテーションは運動療法による早期離床・運動耐容能改善だけに限らず、QOL: quality of life改善、至適薬物治療、栄養管理、メンタルヘルスケア、フレイル・サルコペニア、認知症への介入などを介して心疾患を有する患者のQOL改善、心不全再入院を抑制しひいては生命予後改善を目的とする、と言われるように非常に多面的で、包括的なものである。よって我々が計画する研究計画も心臓リハビリテーションが可能とする多面的効果の評価を目的とする。

  1. 心不全患者に対する多職種包括的介入の効果判定
    2019年より開始した多職種包括的介入の効果を判定する目的で当院の心不全入院患者の全例登録を行い、包括的介入の患者予後に与えた影響を介入開始前と開始後の比較を後ろ向きに評価する。
    *当院でTAVIを受けた患者に対する同様の研究も現在進行中
  2. TAVIを受ける患者の身体機能・運動耐容能、フレイルティと栄養状態の関係性の評価
    当院でTAVIを受けた患者の全例登録を行い、身体機能・運動耐容能、フレイルティ、栄養状態、各々が予後に与える影響の評価を行い、各々の関係性の評価を行う。
  3. 心不全治療の運動耐容能改善に対する影響の評価
    各種心不全治療薬による運動耐容能への影響の前向き観察研究を行う。
    心不全治療薬導入による入院中の運動耐容能改善効果と慢性期の運動耐容能改善効果評価を行う。
  4. 理学/作業療法の実施時間が運動耐容能へ与える影響の評価
    当院では患者様の嫌気性代謝閾値を基準とした運動処方を行い、理学療法を行っているが、一回のリハビリテーションで消化する時間・運動療法の強度の違いの運動耐容能に与える影響を評価する。

多職種包括的介入により身体機能・運動耐容能、フレイルティ、認知機能の情報は理学/作業療法士が、栄養状態の評価は管理栄養士が、不安・抑うつの評価は病棟看護師が行い、包括的な評価が可能となっている。

実績
 学会報告
 【2020年度】
  1. 「心不全再入院を繰り返す患者に対するACP介入後に意識変容・行動変容を生じ、再入院抑制につながった一例」
    立石裕樹、前原達哉、金井和明、有冨早苗、小山勝真、村橋千里、矢野雅文
    第7回日本心筋症研究会
  2. 「TAVIを受ける高齢患者の骨格筋量と筋力・身体機能、フレイルティとの関係性に対する低栄養の影響の評価」
    立石裕樹、前原達哉、金井和明、有冨早苗、末冨建、村橋千里、小山勝真、山本健、矢野雅文
    日本心臓リハビリテーション学会第6回中国支部地方会優秀演題受賞
  3. 「TAVI術後の患者によるセルフケアが術後のフレイルティ改善へ及ぼす影響の評価」
    前原達哉、立石裕樹、金井和明、河本哲、加藤智大、上田紗世、山本健
    日本心臓リハビリテーション学会第6回中国支部地方会
  4. 「TAVIを受ける患者における術前栄養指標とフレイルティの予後予測能の評価」
    立石裕樹、前原達哉、金井和明、有冨早苗、末冨建、宮崎要介、小田哲郎、村橋千里、岡村誉之、矢野雅文
    第24回日本心不全学会学術集会
  5. 「Frailty scale in patients who underwent TAVI correlate with physical function, but not nutritional status and muscle mass」
    立石裕樹、岡村誉之、末冨建、前原達哉、金井和明、奥田真一、和田靖明、宮崎要介、小田哲郎、矢野雅文
    第84回日本循環器学会学術集会
  6. 「TAVIを受ける患者に対する術前包括的フレイル評価法の予後予測能の検討」
    立石裕樹、前原達哉、金井和明、有冨早苗、小山勝真、村橋千里、岡村誉之、矢野雅文
    第26回日本心臓リハビリテーション学会学術集会
 【2019年度】
  1. 「The role of current frailty assessment in the elderly patients who undergo TAVI」
    立石裕樹、前原達哉、金井和明、有冨早苗、小山勝真、村橋千里、矢野雅文
    日本心臓リハビリテーション学会第5回中国支部地方会
  2. 「多職種包括介入がTAVI患者のフレイルに及ぼす影響」
    前原達哉、金井和明、立石裕樹
    日本心臓リハビリテーション学会第5回中国支部地方会
  3. 「TAVIを受ける高齢者における栄養状態評価の臨床的意義」
    立石裕樹、岡村誉之、有冨早苗、前原達哉、金井和明、宮崎要介、小田哲郎、美甘章仁、濱野公一、矢野雅文
    第23回日本心不全学会学術集会
  4. 「TAVIを受けた患者に対する多職種包括的介入のフレイルティ患者に及ぼす影響の評価」
    前原達哉、金井和明、立石裕樹
    第23回日本心不全学会学術集会
 講演
  1. 「心臓リハビリテーションの目指すもの」
    立石裕樹
    第117回日本循環器学会中国地方会 会長企画「多職種チームによる心不全診療の最前線」
  2. 「心不全患者の栄養管理」
    立石裕樹
    山口県栄養士会 令和2年度生涯教育研修会
  3. 「当院の心臓リハビリテーションの構造~現在の試みと課題~」
    立石裕樹
    日本心臓リハビリテーション学会第4回中国支部地方会 メディカルセッション1