金鉱石は普通、銀鉱物を伴い、金銀鉱として採掘される。石英を伴うことが多い。
金品位100~90 Au原子%(100~94.3 Au重量%)を自然金、90~10 Au原子%(94.3~16.9 Au重量%)をエレクトラムと呼ぶ。
金は普通これらの形で産出するが、一般に細粒で、肉眼では見えないものが多い。
肉眼鉱は稀で、特に宮城県鹿折金山の金塊(ナゲット)(最大2.25kg)は世界的にも珍しい。
銀は金同様、自然銀(90~100 Ag原子%、83.1~100 Ag重量%)やエレクトラム(10~90 Ag原子%、5.7~83.1 Ag重量%)として稀に産するが、普通は輝銀鉱(または針銀鉱)Ag2S、濃紅銀鉱Ag3SbS3、淡紅銀鉱Ag3AsS3、脆銀鉱Ag5SbS4、マチルダ鉱AgBiS2、輝銀銅鉱AgCuS、雑銀鉱(AgCu)16Sb2S11などの硫化物や多様な硫塩鉱物として初生的に産し、ときにはナウマン鉱Ag2Seのセレン化物を伴い、また地表近くで二次的に角銀鉱AgClなどハロゲン化物として生じる。
鉱山用語で金銀に含む石英脈中の暗黒色、縞状の条線(帯)を銀黒(ぎんくろ)と言う。
これは微細な銀鉱物の集合体であるが、自然金の微粒がこの部分に含まれることが多く、高品位の金銀鉱となる。
銀黒には輝銀鉱、濃紅銀鉱、淡紅銀鉱、脆銀鉱の銀鉱物を主とするものと、微細な閃亜鉛鉱ZnS、方鉛鉱PbS、黄鉄鉱FeS2、黄銅鉱CuFeS2などの集合に上記の銀鉱物を伴うものとがある。
ときに微粒の黄鉄鉱の集合が銀黒によく似た縞をなすことがあり、これを「にたり」(似ているが偽物)という。これには自然金や銀鉱物を伴わない。
| 分類名 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 鉱物名(和) | 鉱物名(英) | 結晶系 | 化学組成 | 含金量 (重量%) |
| 元素鉱物 | ||||
| 自然金 | Native gold | 等軸 | Au | 94.3-100 |
| エレクトラム | Electrum | 等軸 | (Au,Ag) | 16.9-94.3 |
| オーリキュプライド | Auricupride | 等軸 | Cu3Au | 49.2 |
| 硫化鉱物 | ||||
| ウイッテンボガード鉱 | Uytenbogaardtite | 正方 | Ag3AuS2 | 33.7 |
| テルル化鉱物 | ||||
| カラベラス鉱 | Calaverite | 単斜 | AuTe2 | 43.6 |
| クレンネル鉱 | Krennerite | 斜方 | AuTe2 | 43.6 |
| シルバニア鉱 | Sylvanite | 単斜 | AuAgTe4 | 24.2 |
| ペッツ鉱 | Petzite | 等軸 | Ag3AuTe2 | 25.4 |
| セレン化鉱物 | ||||
| フィッシェライト | Fischesserite | 等軸 | Ag3AuSe2 | 29.0 |
| アンチモン化鉱物 | ||||
| 安金鉱 | Aurostibite | 等軸 | AuSb2 | 44.7 |
| 分類名 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 鉱物名(和) | 鉱物名(英) | 結晶系 | 化学組成 | 含銀量 (重量%) |
| 元素鉱物 | ||||
| 自然銀 | Native silver | 等軸 | (Ag,Au) | 83.1-100 |
| エレクトラム | Electrum | 等軸 | (Au,Ag) | 5.7-83.1 |
| 硫化鉱物 | ||||
| 輝銀鉱 | Argentite | 等軸 | Ag2S | 87.1 |
| 針銀鉱 | Acanthite | 単斜 | Ag2S | 87.1 |
| 硫セレン銀鉱 | Aguilarite | 斜方 | Ag4SeS | 79.5 |
| 輝銀銅鉱 | Stromeyerite | 斜方 | AgCuS | 53.0 |
| 濃紅銀鉱 | Pyrargyrite | 三方 | Ag3SbS3 | 59.8 |
| 淡紅銀鉱 | Proustite | 三方 | Ag3AsS3 | 65.4 |
| 脆銀鉱(ぜいぎんこう) | Stephanite | 斜方 | Ag5SbS4 | 68.3 |
| ミアジル鉱 | Miargyrite | 単斜 | AgSbS2 | 36.7 |
| スミス鉱 | Smithite | 単斜 | AgAsS2 | 43.7 |
| マチルダ鉱 | Matildite | 三方 | AgBiS2 | 28.3 |
| 古遠部鉱 | Furutobeite | 単斜 | (Cu,Ag)6PbS4 | 14.2 |
| パボン鉱 | Pavonite | 単斜 | AgBi3S5 | 12.0 |
| 雑銀鉱 | Polybasite | 単斜 | (Ag,Cu)16Sb2S11 | 74.4 |
| ピアス鉱 | Pearceite | 単斜 | (Ag,Cu)16As2S11 | 77.5 |
| ダイアホル鉱 | Diaphorite | 単斜 | Pb2Ag3Sb3S8 | 23.8 |
| フライエスレーベン鉱 | Freieslebenite | 単斜 | AgPbSbS3 | 20.2 |
| アンドール鉱 | Andorite | 斜方 | PbAgSb3S6 | 12.4 |
| ラムドール鉱 | Ramdohrite | 斜方 | Ag3Pb6Sb11S24 | 8.8 |
| フィゼリ鉱 | Fizelyite | 斜方 | Pb14Ag5Sb21S48 | 7.2 |
| 含銀四面安銅鉱 | Freibergite | 等軸 | (Ag,Cu,Fe)12Sb4S13 (Ag/Cu=1.0 Fe=0.0) 【1】 |
33.5 |
| テルル化鉱物 | ||||
| ヘッス鉱 | Hessite | 単斜 | Ag2Te | 62.9 |
| エンプレス鉱 | Empressite | 斜方 | AgTe | 45.8 |
| ペッツ鉱 | Petzite | 等軸 | Ag3AuTe2 | 41.7 |
| シルバニア鉱 | Sylvanite | 単斜 | AuAgTe4 | 13.2 |
| セレン化鉱物 | ||||
| ナウマン鉱 | Naumannite | 斜方 | Ag2Se | 73.1 |
| ハロゲン化鉱物 | ||||
| 角銀鉱 | Cerargyrite | 等軸 | AgCl | 75.3 |
| 臭銀鉱 | Bromargyrite | 等軸 | AgBr | 57.4 |
| 沃銀鉱(ようぎんこう) | Iodargyrite | 六方 | AgI | 46.0 |
日本国内で稼業された金銀鉱山は付図(分布図)のように広く全国にわたり、盛んに採掘されてきたが、現在稼業しているのは鹿児島県菱刈鉱山だけとなった。 この分布図から、かつてマルコポーロが「東方見聞録(1298年)」で日本を「黄金の国ジパング」といったことも頷ける。 日本で初めて金が発見されたのは、聖武天皇の時代、天平21年(西暦749年)、陸奥国小田郡(現 宮城県涌谷町黄金迫)で、陸奥国守百済王敬福、朱牟須賣(スムスメ)、冶金師戸淨山らの百済の帰化人によって砂金として見い出され、黄金(砂金)600両(約13 kg)が献上された。 時は奈良東大寺盧舎那仏(大仏)造立中で、天皇は大いに喜び、年号を天平感宝と改め、金発見者には叙位を与え、小田郡の民は3年間租税を免ぜられた。 この地には、現在も黄金山神社、黄金橋、金洗井などの遺跡がある。 黄金迫の沢は沖積土に被われ、その底に砂岩、粘板岩、花崗閃緑岩などの礫層があり、その中に含金石英礫を含み、これが風化分解して砂金になったものと考えられる。 この地方は北上山地が南端で仙台平野に接する丘陵地帯にあたり、地形が韓国南部の砂金地帯によく似ていたと言う。
銅精錬の溶剤として用いられる珪酸鉱(SiO2)の代わりに金鉱石(SiO2 分85%以上)が用いられると、銅精錬過程で石英中に含まれていた金・銀は溶融銅に溶け込む。
次に溶鉱炉から生産される粗銅の電気精錬過程で、銅から分離され、さらに金・銀を分離して、金溶鉱炉で溶融され、99.99%の金のインゴットとして生産・販売されている。
この方法だと金鉱石中の金や銀はほぼ完全に回収することができる。
精錬によって得られた金は純金のまま、あるいは合金(18Kなど)として貨幣、メダル、美術高原品、装身具などから歯科材料、電子、通信機器など広範囲に用いられ、日常生活に深くかかわっている。
銀も各種写真フィルム、印画紙などの写真感光材料、スプーン、フォークなどの高級食器類、パソコン、携帯電話などの電器部品、銀ろうなどに広く用いられ、生活の必需品である。
世界における金および銀鉱石の生産量と埋蔵量(2007年)が下図に示されている。
金の生産量は中国、南アフリカ、オーストラリア、アメリカ、ペルーなどで、埋蔵量も南アフリカ、ロシア、オーストラリア、インドネシア、アメリカなどで、インドネシアを除き、大陸の諸国が主要産地で共に世界の60%以上を占めている。
銀もまた大陸、とくに南北アメリカの諸国、中国、オーストラリア、ポーランドなどの主要国のみで世界の生産量の約77%、埋蔵量の約86%に達する。
富の偏在である。
金銀の鉱床は主に熱水鉱床であって、石英を主に、氷長石、粘土鉱物などを脈石鉱物とする鉱脈鉱床、あるいは火山岩を交代した鉱染鉱床からなる(図参照)。 鉱脈鉱床としては、大規模で高品位鉱石が産出する鉱床(菱刈鉱山)もまれにみられる。 カーリン型金鉱床は堆積岩を母岩とする鉱染鉱床で、金粒は小さく、品位も低いが、鉱量が多いことから採掘されている(写真参照)。 また金銀は接触交代鉱床、斑岩銅鉱床や海底噴気熱水鉱床の副産物としても回収される。 海底噴気熱水鉱床が地表で二次富化を受け、高品位の銀鉱石として盛んに採掘されていた鉱山もある(石見銀山、花岡鉱山)。
これらの初生鉱床が風化し金が流出し、河川や海浜に堆積した漂砂鉱床からは、砂金として採掘される(写真参照)。南アフリカのウィトワーテルスラン地方に分布する含金礫岩は、先カンブリア時代に生成した漂砂鉱床である。