アンチモンの鉱石鉱物は下表のようである。そのうち、アンチモンの原鉱として用いられているのはほとんど輝安鉱Sb2S3 である。この鉱物は鉛灰色の柱状の美しい結晶で、長さ数cm~10cm、稀には20~30cm 大のものもあり、石英の晶洞中に産する。中でも愛媛県市ノ川鉱山産のものは世界的に有名である。ベルチェ鉱FeSb2S4 は中瀬(兵庫)、戸沢(長野)からの輝安鉱と共に産出し、これもアンチモンの原鉱として用いられる。安四面銅鉱(Cu,Fe,Zn)12Sb4S13、濃紅銀鉱Ag2SbS3、毛鉱Pb4FeSb5S14 などのアンチモン硫塩鉱物も銀、銅、鉛などの製錬の際、副産物の金属アンチモンや鉛・アンチモン合金として回収される。
アンチモン鉱山は西南日本に多い。そのうち、市の川は日本最大のアンチモン鉱床で、明治中期に盛んに採掘(粗鉱品位約Sb8%)され、最大1,333トン(金属量、1885年)を産した。中瀬、戸沢、津具などの鉱石は自然金を含有し、そのうち中瀬は粗鉱平均品位Au 2~5 g/t、Ag 20~90 g/t、 Sb 0.7~1.7% を有し、大戦中、わが国最大のアンチモン鉱山であった。しかし、国内産鉱石のコスト高、スラグや亜硫酸ガスなど公害処理問題もあって、1969年、中瀬をはじめすべての国内アンチモン鉱山は操業を停止した。
| 分類名 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 鉱物名(和) | 鉱物名(英) | 結晶系 | 化学組成 | 含Sb量 (重量%) |
| 元素鉱物 | ||||
| 自然アンチモン | Native antimony | 三方 | Sb | 100.0 |
| 硫化鉱物 | ||||
| 輝安鉱 | Stibnite | 斜方 | Sb2S3 | 71.7 |
| 幌別(ほろべつ)鉱 【1】 | Horobetsuite | 斜方 | (Bi,Sb)2S3 (Bi/Sb=1) 【2】 | 28.5 |
| ベルチェ鉱 | Berthierite | 斜方 | FeSb2S4 | 56.9 |
| 安四面銅鉱 | Tetrahedrite | 等軸 | (Cu,Fe,Zn)12Sb4S13 (Fe,Zn=0) | 29.2 |
| 濃紅銀鉱 | Pyrargyrite | 三方 | Ag3SbS3 | 22.5 |
| ミアジル鉱 | Miargyrite | 単斜 | AgSbS2 | 41.4 |
| 脆銀(ぜいぎん)鉱 | Stephanite | 斜方 | Ag5SbS4 | 15.4 |
| ダイアホル鉱 | Diaphorite | 単斜 | Pb2Ag3Sb3S8 | 26.9 |
| ブーランジェ鉱 | Boulangerite | 斜方 | Pb5Sb4S11 | 25.9 |
| 車骨鉱 | Bournonite | 斜方 | PbCuSbS3 | 24.9 |
| ファマチン鉱 | Famatinite | 正方 | Cu3SbS4 | 27.6 |
| 輝安銅鉱 | Chalcostibite | 斜方 | CuSbS2 | 48.8 |
| 毛鉱 | Jamesonite | 単斜 | Pb4FeSb6S14 | 35.4 |
| アンチモン化鉱物 | ||||
| 安砒(あんひ)鉱 | Stibarsen | 三方 | SbAs | 61.9 |
| 紅安ニッケル鉱 | Breithauptite | 六方 | NiSb | 67.5 |
| 安銀鉱 | Dyscrasite | 斜方 | Ag3Sb | 27.3 |
| 酸化鉱物 | ||||
| バレンチン鉱 | Valentinite | 斜方 | Sb2O3 | 83.5 |
| 黄安華 | Stibiconite | 等軸 | Sb3O6(OH) | 76.4 |
| 紅安鉱 | Kermesite | 三斜 | Sb2S2O | 75.2 |
アンチモンは鉛や錫と合金に加工すると硬度が増加し、耐摩耗性や被削性度を向上させる特性がある。 このため、合金として蓄電池、軸受け、快削鋼などの減摩合金、硬鉛鋳物に用いられる。 また三酸化アンチモンはハロゲン系難燃剤とともに併用して各種プラスチック、ゴム、繊維、塗料、接着剤などの難燃効果を高める難燃助剤として用いられる。 その他に用途として、ポリエステルなどの重合触媒、高級ガラスの泡を消す清澄剤、ブレーキなどの摩擦材などがある。
アンチモンの鉱石は中国、ボリビア、ベトナム、韓国などから輸入されたが、その量は年々減少している。2007年度のアンチモン鉱石輸入量は、わずかに中国8トン(Sb 45%)、韓国10トン(Sb 23%)、計18トン(平均品位32%)のみである。この輸入鉱石はアンチモン地金や三酸化アンチモンに精製された。その後、安価な中国産地金が輸入され、国内では地金から三酸化アンチモンの生産に次第に切り替わり、この数年間は輸入地金のほぼ全量を中国から輸入し、2007年中国6,802トン(地金輸入量の90.9%)、ベトナム 637トン(8.5%)、その他43トン(0.6%)、計7,482トン となっている(JOGMEC鉱物資源マテリアル・フロー2009年)。
2007年における世界の国別アンチモン鉱の生産量および埋蔵量が図に示されている。中国が生産量(世界の88.5%)、埋蔵量(55.7%)ともに断トツの1位である。その他にわずかではあるが、ボリビア、南アフリカ、ロシア、タジキスタンなどで生産されている。また、埋蔵量ではタイ、ロシア、ボリビア、南アフリカ、タジキスタン、アメリカなどが続くが、中国の動向によっては、タングステン同様、アンチモンの国際市況も大きく影響される可能性が大きい。