鉄鉱

 鉄は現代社会における基本的なものであり、無くてはならない物質のひとつである。 産業革命以降、鉄の利用は急激に増加し、その生産額は国力を示すと言われた。 日本には大小さまざまな鉄鉱を産出する鉱山があったが、今ではすべて廃山となった。 そのため、鉄鉱はすべてオーストラリア、ブラジル、インド、南アフリカ、フィリピン、カナダなど外国からの輸入に頼っている。 中国は生産量が世界第1位であるが、日本は中国から輸入していない。
 鉄の鉱石鉱物としては磁鉄鉱Fe3O4、赤鉄鉱Fe2O3、針鉄鉱FeO(OH)などがあるが、現在はほとんど前二者が利用されている(鉄の鉱石鉱物の表を参照)。 磁鉄鉱はときにチタン(Ti)やバナジウム(V)を含むものがあり、南アフリカ、ロシア、中国(河北省らん平)などより産する。従来、褐鉄鉱(Limonite)といわれていた鉄の鉱物は針鉄鉱が主な鉱物であり、ときに針鉄鉱とともに少量の鱗鉄鉱を伴う場合やまれに鱗鉄鉱を主とするものがあり、褐鉄鉱は鉱物名として用いられていない。
 この褐鉄鉱質の鉱石の代表例は、ドイツ・フランスの国境地帯Lorrainkara-Luemburg地方に産する鉄鉱「ミネットMinette(魚卵状褐鉄鉱)」で、かつては欧州における重要な鉄の資源であった。中国遼寧省(りょうねいしょう)にある鞍山、弓長嶺、本渓湖などの鉄鉱床群は磁鉄鉱および赤鉄鉱を含む石英片岩であり、鉄品位25~60%、埋蔵量10億トン以上の大規模な鉱床であるが、低品位で鉄50%以上の鉱石は少ない。また北朝鮮の咸鏡北道および中国との国境に近い茂山にも同様な鉱床(平均38%、10数億トン)があり、ともに戦前戦中に日本により開発されたものであるが、現在も北朝鮮は中国の協力を得て稼行中である。

鉱石鉱物

鉄(Fe)の主な鉱物
鉱物名(和) 鉱物名(英) 結晶系 化学組成 含鉄量
(重量%)
磁鉄鉱Magnetite等軸Fe3O472.4
赤鉄鉱 【1】Hematitie三方Fe2O369.9
磁赤鉄鉱Maghemite正方Fe2O369.9
針鉄鉱Goethite斜方 Pnma 【2】FeO(OH)62.8
鱗鉄鉱Lepidocrocite斜方Amam 【2】FeO(OH)62.8
  •  オレンジ色太字:主要鉱物
  •  【1】:灰白色、金属光沢、板状結晶のものを鏡鉄鉱(specularite)、雲母状結晶のものを雲母鉄鉱(micaceous hematitie)と称する。
  •  【2】:空間群

国内の鉱床分布図

日本の鉄鉱床分布図
日本の鉄鉱床分布図

 わが国の鉄鉱石は、スカルン鉱床、鉱泉沈殿型鉱床および砂鉄鉱床から産出したが、いずれも現在では稼行されていない。
 スカルン鉱床としては、釜石、和賀仙人(岩手)、秩父(埼玉)鉱山が代表的なものである。
 鉱泉沈殿型鉱床としては、倶知安、喜茂別、徳舜瞥、大漠、虻田(北海道)、草津、群馬(群馬)が知られている。 このタイプの鉱床は第四紀の火山活動に伴う温泉や鉱泉などの含鉄水からの化学的、微生物(バクテリア)的作用で沈殿したものである。 その多くが当時の沼地に産するため、別名「沼鉄鉱Bog iron ore」とも呼ばれている。 室蘭製鉄所は戦前、国策上この鉄資源を利用するために建設された。
 砂鉄鉱床としては、内浦湾(北海道)や八戸市(青森)の海岸線付近および玉浦海岸(宮城)の砂丘中のものが知られている。 山陰地方や岩手県内では、花崗岩の風化物に由来する砂鉄(山砂鉄という)が古くから利用されてきた。

世界の生産量と埋蔵量

 各国より輸入した鉱石は製鉄所で製錬されている。その粗鉱量は年間計1億4千トン、生産額は世界第2位(2007年度)である。各国の鉄の埋蔵量と生産量は下図のようである。

世界の鉄鉱生産量
世界の鉄鉱生産量
世界の鉄鉱埋蔵量
世界の鉄鉱埋蔵量

鉱床

マグマ鉱床の鉄鉱石の産状
マグマ鉱床の鉄鉱石の産状

 鉄鉱石を産する鉱床には、マグマ性鉱床、カーボナタイト鉱床、スカルン鉱床、熱水鉱床、化学的・生化学的堆積成鉱床、漂砂(砂鉄)鉱床などがある。
 これらのうち、世界的にもっとも重要な鉱床は、化学的・生化学的堆積成鉱床である。この型の鉱床は、先カンブリア時代の岩石中に層状に分布し、縞状鉄鉱層とよばれている。この鉄鉱層は、一般に赤鉄鉱層や磁鉄鉱層、それにチャート質層と互層をなす。縞状鉄鉱層は、生成環境や生成時期などにより大きく、アルゴマ型とスペリオル型の二つに分けられる。
 アルゴマ型鉱床は緑色岩帯中に層状またはレンズ状に分布する。緑色岩は先カンブリア時代の海底火山活動により噴出した火山岩や火山砕屑岩が広域変成作用を受けて生成したものであり、このタイプの鉄鉱層の鉄は火山活動に伴うマグマ起源とされている。代表的なアルゴマ型鉱床は、ハドソン湾南西域(カナダ)、ギアナ、ベネズエラ、ブラジル、オーストラリア西部、リベリアなどに分布する。
 スペリオル型鉄鉱層は、砂岩、粘板岩、チャートなどの堆積岩中に分布し、鉱床規模が大きい。鉱床は、磁鉄鉱層や赤鉄鉱層がチャート層と縞状構造をなす。スペリオル型鉄鉱層は、北アメリカ大陸五大湖の一つであるスペリオル湖北西部に多数分布し、鉱石はタコナイトとよばれる。この種の鉱石は広域変成作用を受け鉄鉱物が再結晶し鏡鉄鉱に変化したものより構成されている。

スペリオル型鉄鉱層の露天掘り
スペリオル型鉄鉱層の露天掘り
(アメリカ、ミネソタ州
Mesabi 鉄山)
カナダ、オンタリオ州Sherman鉱山産縞状鉄鉱石
カナダ、オンタリオ州
Sherman鉱山産縞状鉄鉱石