モリブデンの鉱石鉱物は付表のようであるが、実際はほとんど輝水鉛鉱MoS2だけである。その多くは黄銅鉱や石英に伴って産する。南北アメリカ大陸のコルディレラ山系中チリ、アメリカ、メキシコ、カナダに見られる斑岩銅鉱床からの産出が世界的に最も多い(付図世界の生産量参照)。
モリブデン鉱石の品位はモリブデンを主体に採掘している鉱山では0.2~0.5%MoS2で、銅鉱の副産物として回収している場合には0.02~0.08%MoS2 程度である。このように輝水鉛鉱の含有量は微量であるが、浮遊選鉱法による濃集が効果的で採算がとれている。
| 分類名 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 鉱物名(和) | 鉱物名(英) | 結晶系 | 化学組成 | 含Mo量 (重量%) |
| 硫化鉱物 | ||||
| 輝水鉛鉱 | Molybdenite | 六方 | MoS2 | 59.9 |
| 酸化鉱物 | ||||
| パウエライト | Powellite | 正方 | CaMoO4 | 48.0 |
| 黄鉛鉱 【1】 | Wulfenite | 正方 | PbMoO4 | 26.1 |
| 水鉛華 | Ferrimolybdite | 斜方 | Fe2(MoO4)3・8H2O | 39.1 |
戦時中、軍需省(現経済産業省)はレーダー(電波探知機)などの電子機器(兵器)の改良と増産のため、国内のモリブデン資源の開発を進め、大小多数のモリブデン鉱山が稼働した。終戦後その多くは廃山となったが、平瀬(岐阜)、小馬木、東山、大東(島根)など数鉱山は1980年~1990年頃まで採掘し、その後休山となった。
日本でのモリブデン需要は鉄鋼分野が全体の約85%を占める。特殊鋼(モリブデン鋼、ステンレス鋼、高張力鋼、高速度鋼など)として自動車、航空機、ロケットのエンジンやタービンなどに使用されている。他にモリブデン金属(線、板、棒、箔など)として高温電気炉や原子炉関係の発熱体、自動車のハロゲンランプなどの照明用品、電子管など電子機器の部品、さらに石油精製用の触媒にも利用される。モリブデンはこのように必需な金属であり、国際情勢の急変に備え、国内消費量の最低60日分を国家備蓄するように定められている。
二硫化モリブテン(輝水鉛鉱)は摩擦係数が低いことから、工業用の潤滑油やエンジンオイルの添加剤として用いられる。
現在モリブデン鉱はすべて輸入に頼っている。鉱石は現地(輸出国)で浮遊選鉱した輝水鉛鉱の精鉱を焙焼した粗三酸化モリブデンMoO3(焙焼鉱~60%Mo)がほとんどで、このほか少量の輝水鉛鉱(二硫化モリブデン)を輸入している。
輸入した焙焼鉱はフェロモリブデンや金属モリブデンに精製、市販されている。