鉛と亜鉛の鉱石は通常互いに伴って産する。
その代表的な鉱物は方鉛鉱(PbS)と閃亜鉛鉱(ZnS)である。
方鉛鉱はときに銀を固溶(鉛の一部を銀で置換)し、含銀方鉛鉱(Pb,Ag)Sとして銀の鉱石鉱物にもなる。
一方、閃亜鉛鉱は亜鉛の一部を通常鉄、カドミウムによって置換され、(Zn,Fe,Cd)Sの組成を示す。
そのため亜鉛鉱石の精錬過程でカドミウム汚染など公害問題を生じた。
閃亜鉛鉱はときには有用なレアメタルのゲルマニウムGe、インジウム InやタリウムTaなどを微量ながら固溶するために、これらは亜鉛製錬の重要な副産物として回収・利用されている。
表には多数の含鉛鉱物(硫化鉱物、硫塩鉱物)が併記されているが、いずれも希産鉱物で、これが主要な鉛の鉱石鉱物として稼行の対象とはならない。
| 分類名 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 鉱物名(和) | 鉱物名(英) | 結晶系 | 化学組成 | 含鉛量 (重量%) |
| 硫化鉱物 | ||||
| 方鉛鉱 | Galena | 等軸 | PbS | 86.6 |
| ティール鉱 | Teallite | 斜方 | PbSnS2 | 53.1 |
| 古遠部鉱 | Furutobeite | 単斜 | (Cu,Ag)6PbS4 | 27.2 |
| セムセイ鉱 | Semseyite | 単斜 | Pb9Sb8S21 | 53.1 |
| ジンケン鉱 | Zinckenite | 六方 | Pb9Sb22S42 | 31.7 |
| ブーランジェ鉱 | Boulangerite | 単斜 | Pb5Sb4S11 | 55.2 |
| 車骨鉱 | Bournonite | 斜方 | PbCuSbS3 | 42.4 |
| コサラ鉱 | Cosalite | 斜方 | CuPb7Bi6S17 | 43.8 |
| 毛 鉱 | Jamesonite | 単斜 | Pb4FeSb6S14 | 40.1 |
| アイキン鉱 | Aikinite | 斜方 | PbCuBiS3 | 36.0 |
| フライエスレーベン鉱 | Freieslebenite | 単斜 | AgPbSbS3 | 38.9 |
| アンドール鉱 | Andorite | 斜方 | PbAgSb3S6 | 23.7 |
| フィゼリ鉱 | Fizelyite | 斜方 | Pb14Ag5Sb21S48 | 38.5 |
| ラムドール鉱 | Ramdohrite | 斜方 | Ag3Pb6Sb11S24 | 33.8 |
| ダイアホル鉱 | Diaphorite | 単斜 | Pb2Ag3Sb3S8 | 30.5 |
| フランケ鉱 | Franckeite | 三斜 | FePb5Sn3Sb2S14 | 48.4 |
| 円柱錫鉱 | Cylindrite | 三斜 | Pb3Sn4FeSb2S14 | 33.7 |
| テルル化鉱物 | ||||
| テルル鉛鉱 | Altaite | 等軸 | PbTe | 61.9 |
| 炭酸塩鉱物 | ||||
| 白鉛鉱 | Cerussite | 斜方 | PbCO3 | 77.5 |
| 硫酸塩鉱物 | ||||
| 硫酸鉛鉱 | Anglesite | 斜方 | PbSO4 | 68.3 |
| 分類名 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 鉱物名(和) | 鉱物名(英) | 結晶系 | 化学組成 | 含Zn量 (重量%) |
| 硫化鉱物 | ||||
| 閃亜鉛鉱 | Sphalerite | 等軸 | (Zn,Fe)S (Fe=0) | 67.1 |
| 繊維亜鉛鉱 | Wurtzite | 六方 | (Zn,Fe)S (Fe=0) | 67.1 |
| 黄錫亜鉛鉱 | Kesterite | 正方 | Cu2(Zn,Fe)SnS | 19.0 |
| 酸化鉱物 | ||||
| 紅亜鉛鉱 | Zincite | 六方 | ZnO | 80.3 |
| 炭酸塩鉱物 | ||||
| 菱亜鉛鉱 | Smithsonite | 三方 | ZnCO3 | 52.1 |
| 異極鉱 | Hemimorphite | 斜方 | Zn4Si2O7(OH)2・H2O | 54.3 |
日本における鉛・亜鉛の鉱山は図のように、全国的に分布し、中でも神岡(岐阜)、中竜(福井)、細倉(宮城)、小坂(秋田)、花岡(秋田)、豊羽(北海道)などは、わが国屈指の大鉱山であった。しかし、1990年代、ほとんどの鉱山が廃山となり、最後まで残っていた豊羽鉱山も2006年3月ついに操業を停止した。これで日本には鉛・亜鉛鉱山は皆無となった。豊羽の亜鉛精鉱(平均亜鉛56%)中にはインジウムが0.1~0.2%含まれ、製錬副産物として年10~14トンの金属インジウムを産出していた。この額は当時鉱山として世界1位であったが、生産停止によりわが国の重要なインジウム供給源を失われた。
現在、わが国は鉛・亜鉛鉱石のすべてをオーストラリア、ペルー、アメリカなど海外からの輸入に頼っている。このうち鉛鉱は小坂(秋田)、契島(広島)など、また亜鉛鉱は彦島(山口)、安中(群馬)、飯島(秋田)などの製錬所に送られる。また一部はエム・エスジンク播磨事業所や八戸製錬所において、英国で開発されたIPS式製練法によって鉛と亜鉛の同時製錬が行われている。
鉛は蓄電池、ガス管、電線ケーブル、放射線の遮蔽板、硫酸製造鉛室、はんだ、ヒューズなど、また亜鉛はトタン、真ちゅう、乾電池など日常生活の必需品であり、上記した副産物のGe、In、Ta なども電子機器の素材として、半導体素子や液晶パネルの透明電極などのIT 産業の急速な発展とともにその使用量が急増している。
鉛鉱の国別生産量および埋蔵量(2007年)は図に示したように、中国、オーストラリアおよび南北アメリカの諸国のみで、全世界の生産量の82.7%、埋蔵量も73.6%になる。
また亜鉛も鉛とほぼ同様な傾向があり、中国、オーストラリアおよび南北アメリカだけで、それぞれ70.4%および73.5%に達する。
日本はこれらの国から輸入しているが、生産量および埋蔵量とも世界1位の中国からは輸入していない。
鉛、亜鉛は他の金属に比べて世界的に資源の枯渇過度がひどく、これまでのように多量の消費が続けばやがてなくなる。今からその対策が必要であろう。
鉛・亜鉛鉱床の主要な鉱床は鉱脈型熱水鉱床で、スカルン鉱床、海底噴気熱水鉱床、噴気堆積(セデック型)鉱床、ミシシッピバレー型鉱床などにもみられる。 接触交代鉱床型鉛・亜鉛鉱床は銅、銀、金を伴いしばしば銀を伴う。 海底噴気熱水鉱床は酸性の海底火山活動に伴って生成されたものであり、鉛・亜鉛に銅を伴うことが多く、日本、カナダ、カザフスタン、スウェーデンなどに産する。 セデックス型鉛・亜鉛鉱床は、砂岩、頁岩などの堆積岩中に産する大型の層状鉱床で、海底に生成された鉱床と考えられる。 カナダ、オーストラリア、アメリカ、南アフリカ、インドなどに分布する。 ミシシッピバレー型鉛・亜鉛鉱床は炭酸塩岩中の一定層準に、多数の塊状ないし層状の鉱床が広く分布し鉱床帯をつくるもので、続成作用に伴う低温熱水作用の産物と考えられる。 北アメリカがこの型の鉱床の主要分布地域である。