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走性が生み出すパターン

  非平衡開放系では,各種エネルギー流による自己組織化により散逸構造が創発します. 散逸構造を研究する上で有用なモデルの1つが反応拡散系であり,これまでの研究で様々なパターンの存在が実証されてきました. こうしたパターンの多くは環境と対象との非線形相互作用に誘起されるものです. 階層をまたいだ相互作用が本質的であることから,これまでに有効だった手法 - 例えば,環境を静的なものとして扱う平均場近似や,階層が極めて離れていると仮定することで環境からの効果を白色雑音として扱うランジュバン方程式 - をそのまま適用することは困難です. 微視領域の研究がますます深化する状況を鑑みると,環境と対象との相互作用が生み出す非線形特性は,自然科学の研究において重要度が増すものと考えられます. しかしながら,階層相互作用を扱う統一的な枠組は未だ無く,環境と対象とが影響を及ぼし合う様々な系についての各論研究が必要とされているのが現状です.

  生物が有する階層相互作用として走性が挙げられます. 走性とは,環境場の方向性に応じて生物がとる生得的な行動を指します. 走性を有する生物のダイナミクスを理解するために,走性を取り入れた反応拡散走性モデルの数学的性質がこれまでに研究されてきました. 走性に従って運動することにより生物が環境場に影響を及ぼすことを考えると,このモデルは生物現象としてだけでなく階層性の普遍的性質を理解する上でも有用な非線形モデルです. 我々は,3次元パターンの研究や動的パターンの統計物理学的解析を通じて,走性が果たす役割を階層性の観点から研究しています.

成果

T. Narumi and K. Osaki, RIMS Kôkyûroku 1917, 86 (2014).
T. Aoki, T. Narumi and K. Osaki, RIMS Kôkyûroku (to appear in 2018).