美学・美術史特殊講義二〇一〇


授業の概要

この講義では、国内外で開催されている国際美術展の現況について解説します。デジタル画像やビデオの上映を交えながら国際美術展の歴史、代表的な国際美術展を紹介したのち、特に 一九九〇年代以降の地球規模化をめぐる今後の課題について、ヨーロッパとアジアとの対比の中で考察します。


授業の一般目標

一、国際美術展の現況について理解する。
二、国際美術展の歴史について理解する。
三、地球時代の現代美術に対する問題意識をもつ。


授業の到達目標

知識・理解の観点

 代表的な国際美術展について簡単な説明ができる。

思考・判断の観点

 国際美術展の地球規模化について肯定的な側面と課題とを指摘できる。

関心・意欲の観点

 自ら国際美術展を見に出かける。あるいは、インターネット上の関連サイト、新聞、雑誌で国際美術展に関する情報を収集する。

 

 

授業計画

前半は、国際美術展の歴史を地域別に紹介します。中盤は毎回1つの国際美術展を取り上げ、話題を集めた作品を紹介したり、企画者の意図について解説します。最後に国際美術展における地球規模化をめぐる課題について皆さんとともに考察します。

四・十三

  <零>    オリエンテーション

四・二十

<第一講> 多文化主義と国際美術展(一)チリ・トリエナル2009

四・二十七

<第二講> 多文化主義と国際美術展(二)第十一回国際イスタンブール・ビエナリ

五・四

 (休講) みどりの日

五・十一

 (休講) 第9回 ダッカールト―アフリカ現代美術ビエンナーレ調査

五・十八

<第三講> 多文化主義と国際美術展(三)第六回アジア太平洋現代美術トライエニアル

五・二十五

<第四講> 多文化主義と国際美術展(四)第十六回シドニー・ビエンナーレ

六・一

<第五講> 中間まとめ 近年の国際美術展動向とベルゲン・ビエンナーレ会議

六・八

<第六講> 日本の国際美術展(一)横浜トリエンナーレ

六・十五

<第七講> 日本の国際美術展(二)福岡アジア美術トリエンナーレ

六・二十二

<第八講> 日本の国際美術展(三)大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ

六・二十九

<第九講> 二大国際美術展(一)ドクメンタ

七・六

<第十講> 二大国際美術展(二)ヴェネツィア・ビエンナーレ

七・十三

<第十一講> 考察(一)公定現代美術と地産美術

七・二十

<第十二講> 考察(二) 世界美術史

七・二十七

 期末試験

 

 

リンクシラバス


参考図書

国際美術展

岡林洋ほか編『アートを学ぼう』(ランダムハウス講談社、二〇〇八年)
 ※岡林洋「アートを学ぼう―イン「グランドツアー2007」」/竹中悠美「ベニス・ビエンナーレは何をもたらしたのか」

暮沢剛巳、難波祐子編著『ビエンナーレの現在―美術をめぐるコミュニティの可能性』(青弓社、二〇〇八年)

岡部あおみ編『アートが知りたい』(武蔵野美術大学出版局、二〇〇五年)
 ※第7章が国際美術展に充てられている:「ユートピアのインスタレーション――国際展都市論」「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」

『記録集 横浜会議2004「なぜ、国際展か?」』(BankART1929、二〇〇五年)

伊東正伸ほか『アートマネージメント』(武蔵野美術大学出版局、二〇〇三年)
 ※国際展の急増、横浜トリエンナーレ

南條史生『美術から都市へ――インディペンデント・キュレーター15年の軌跡』(鹿島出版会、一九九七年)

ヴェネツィア・ビエンナーレ

サラ・ソーントン『現代アートの舞台裏』、鈴木泰雄訳、(ランダムハウス講談社、二〇〇九年)
 ※第7章がヴェネツィア・ビエンナーレ第52回国際美術展(2007年)のレポート

『12人の挑戦――大観から日比野まで』(茨城新聞社、二〇〇二年)

石井元章『ヴェネツィアと日本―美術をめぐる交流』(ブリュッケ、一九九九年)

『ヴェネツィア・ビエンナーレ―日本参加の40年』(国際交流基金ほか、一九九五年)

雑誌

「特集―世界のアートシーンと日本作家」、『Bien』第四十二巻、二〇〇七年一・二月号、四―三五頁

「アジア=パシフィック 今年の注目国際展」、『アートイット』第十二号、二〇〇六年七月

「特集―世界のアート・パワー!」、『美術手帖』第八五一号、二〇〇四年七月、二九―一二四頁


参考リンク

ベルゲン・バイエニアル会議(二〇〇九年九月、ベルゲン・クンストハレ)

ベルゲン・バイエニアル会議公式サイト

9月17日から4日間、ノルウェーで開催された会議の模様を見ることができる。

ドクメンタ12記者会見(二〇〇六年九月、森美術館)

TABlog: TAB Video スタート!のページの以下のリンクをクリック。
documenta 12 press conference, part 1.
documenta 12 press conference, part 2.
documenta 12 press conference, part 3.

同展キュレーターの一人で美術史家のルース・ノアックとマガジン・プロジェクトの総監督ゲオルグ・シュルハマーによる記者会見(英語)。

「国際展を考える」(二〇〇五年六月二十五日〜八月六日)

BankART1929共同企画「BankArt School『国際展を考える』」 ※それぞれの講義内容が動画で閲覧できる。
・北川フラム「国際展のつくり方1」
・川俣正「第2回横浜トリエンナーレに向けて」
・市原研太郎「国際展の見方」(15:00〜)
・小沢剛「私の国際展体験」(18:30〜)
・石内都「ヴェネツィア・ビエンナーレ報告」
・清水敏男「国際展の新しい波」
・南條史生「国際展とはなにか」
・長谷川祐子「国際展のつくり方2」

国際美術展の一覧

Calendar: Biennials and other regular art exhibitions

Universes in Universeによる。二〇〇一年以降の過去の年の開催一覧も閲覧できる。


Q&A

Q1. ビエンナーレの開催予算はどこから出ているのでしょうか?

A1. 多くは国や地方自治体から出ています。それに文化財団や企業からの助成が加わります。
 

Q2. 先生自身が国際美術展の企画をしたいと思ったことは?

A2. 学芸員時代にある先輩キュレーターから、「展覧会はやっぱ企画するものではなくて、見るものだよ」と言われたことが、ずっと心に残っています。今は適度な数の展覧会を見て、その内容について充分に考え、文章にする時間をとりたいと願っています。
 

Q3. 国際美術展に参加する資格はどのようなものですか?/国際美術展の出品作はどのようにして選ばれるのでしょうか?

A3. UBEビエンナーレのように、公募による展覧会もありますが、多くは招待制です。展覧会を企画するキュレーターを選考する委員会がまずあって、キュレーターが作家や作品を選びます。ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展は、キュレーターが企画する国際企画展部門と、各参加国が自国の作家を選定して送り込む国別参加部門の2つの方式を併用しています。
 

Q4. 国際美術展の入場料は?

A4. 国際イスタンブール・ビエナリで10TL(≒640円、@63.29円)。チリ・トリエナル2009は、ほとんどの会場が無料でした。日本では、越後妻有アートトリエンナーレ2009のパスポートが3,500円。横浜トリエンナーレ2008が1,800円。今年開催のあいちトリエンナーレ2010も1,800円です(一般・当日券)。
 

Q5. 出品作品に対して、宗教上の理由などで制約が課されることがありますか?

A5. 「国際的な」、「現代美術展」であるからには、多くの国際美術展では、表現手段や内容の自由が最大限に尊重されていると想像されます。また、私の知る限り、第7回リヨン・ビエンナーレや横浜トリエンナーレ2007、釜山ビエンナーレ2008で、ある展示室の作品が性的表現を含む、あるいは表現が過激であることから、その部屋に入る際に、年齢確認(未成年は入室不可)と「性的な内容を含む/お客様によっては気分が悪くなる場合も…」といった事前予告がありました。
 

Q6. 現代美術を見るときのポイントは?

A6. なるべくたくさん見ることに尽きると思います。同じ作家の作品を複数の展覧会で見比べてみたり、数年間見続けてみたり。同じ国、同じ時代―現代美術といっても、2000年代、1990年代、80年代、70年代でまた違ってきますから―、似たような主題、素材、表現方法等で見比べることで、少しずつ自分の中に「物差し」のようなものが出来てきて、そしてそうした物差しが出来たあとでも、新しい作品と出合う度に、自分の中の価値観やものの見方が刷新されるところに、現代美術を見続ける面白さがあると思います。
 

Q7. 写真を撮るのはOKなんですか?

A7. 特別な許可をもらって撮影している場合と、フラッシュと三脚を使用しないならOKという場合があります。また、作品によって撮影可能なものと撮影不可能なものがあったりします。