病院の概要
病床数:234床
泌尿器科部長名:石津和彦
泌尿器科スタッフ数:医師1名
都志見病院泌尿器科案内:
当院は萩地区(周辺人口を含め5万人)で唯一常勤の泌尿器医のいる病院です(泌尿器科専門の開業医もいません)。また、萩地区の65歳以上の人口が35%を占め、当院の受診者のほとんどは高齢者です。その2点が都志見病院泌尿器科の現状を特徴づけています。
外来は私が週4回、大学病院からのバイトの医師が週1回担当しています。私の外来は、初診および再診を含め1日40人前後の患者さんが受診されます。神経因性膀胱、前立腺肥大症、悪性腫瘍、尿路結石、尿路感染症と幅広い疾患で受診されます。小児の患者さん(手術の必要な患者さんは他院へ紹介しています)は年間20人前後で、不妊症の患者さんの受診は間1例以下です。
当院は萩・長門地区で唯一、体外衝撃破砕装置(2012年に装置を買い換えました)がある施設で、年間100〜150人の患者さんに体外衝撃波腎尿管結石破砕術を行っています。疼痛で受診された患者さんは当日に破砕術を施行し、体外衝撃波だけで優しく治療することを目標にしています。そのために、梅雨や夏場のシーズン期には休日や時間外に治療を行うことも多くあります。1症例に平均2回程度の治療が必要ですが、外科的手術が必要となる症例は1%程度です。
前立腺生検は1年間40〜80例程度行っています。前立腺全摘の対象となる症例(大きな合併症がなく、75歳以下)では、PSAが4ng/ml以上で、それ以外の症例ではPSAが10ng/ml以上の症例で生検行っています。生検により年間40例前後の前立腺癌が発見されます。前立腺全摘出術や小線量療法を希望され患者は、他院へ紹介していますが、年間2〜5人程度です。初診時から進行している症例が多く、初診時のPSAが1000ng/mlを超える症例も稀ではありません。75歳以上の症例が多く、ほとんどの症例で内分泌療法を行っています。通院が困難な患者さんや初診時から進行している患者さんには除睾術を勧めています。長期に経過観察を行っていると、75歳以上で早期癌が発見されたために内分泌療法で治療した患者さんが、前立腺が死亡することは稀で、他疾患で死亡することのほうがはるかに多いという印象を受けています。ホルモン治療抵抗性になった症例にはタキソテールによる化学療法を行っています。症例によっては良好な治療効果が得られるのですが、いつまで治療を継続すべきなのか悩みます。
膀胱癌は初発と再発を含め、年間30〜50例程度発見されます。表在癌は経尿道的膀胱腫瘍切除術を行っています。局所浸潤癌に対しては、2012年3月までは、CDDP併用放射線療法を中心に行い良好は成績が得られていましたが、当院から放射線照射装置がなくなったために、放射線治療や膀胱全摘除術の必要な症例は他院へ紹介しています。転移のある尿路上皮癌にはジェムザールとシスプラチンを併用した化学療法を行っています。以前の抗癌剤(MVAC療法)に比べ、副作用が少なく随分楽に治療が行えるようになったなと思います。
人口の高齢化により、腎癌は減少傾向にあり、腎盂尿管癌は増加傾向にあります。根治的腎摘除術や腎尿管全摘除術は年間5例程度行っています。腎盂癌や上部尿管癌は尿管引き抜き術を行っています。手術創が1つ少なく、患者さんの回復は早いようですが、内視鏡による処置や術中の体位変換のために手術時間はあまり変わりないように思われます。
当院では、80〜100例の血液透析が行われており、当科ではブラッド・アクセスの管理を担当しています。患者さんの高齢化および糖尿病患者さんの増加のために、通常の橈骨動脈―橈側皮静脈吻合術では内シャントの作成が困難は症例が増加しています。そのため、肘部での動静脈の吻合や人工血管を用いての内シャントを作成する機会も多くなっています。内シャントの作成の不可能な患者さんや心機能不良の患者さんには、上腕動脈や大腿動脈の表在化を行っています。内シャントの狭窄により血流の低下が生じた時は、バルーンを用いて経皮的血管拡張術を行っています。内シャントが閉塞した時には、吻合部やシャント血管の狭窄が認められることが多く、内シャントの再建(再吻合)やバルーンを用いての狭窄部の拡張を、血栓除去と同時に行っています。
手術場を使用する手術は、年間120〜180例程度です。腰椎麻酔下の経尿道的な手術を最も多く行っています。患者さん高齢化により、経尿道的膀胱腫瘍切除術の症例は増加する傾向にあります。一方、αブロッローの発達により経尿道的前立腺切除術は激減しています(尿閉以外の患者さんには手が回らないためもあります)。次に多いのは、シャントに関連する手術です。尿管結石による膿腎症や悪性腫瘍による腎後性腎不全も多く、緊急で経皮的腎瘻造設が必要な症例が年間10例前後あります。
年間の入院患者数は年間300〜400例程度で、10〜20人の患者さんが入院しています。泌尿器科の患者さんは3階病棟を中心に入院していますが、満室な時は、内科病棟や外科病棟への入院も可能です。近くに泌尿器科のいる病院がないために、緊急入院の必要な患者さんを他院に紹介するのが困難で、大変助かっています。入院患者さんは、朝7時過ぎから(8時30分から外来を開始するため)と、午後(多くは夜間になります)の最低2回は患者さんの診察を行っています(休日は原則1回にしています)。それにより、小さな病状の変化を見逃さず、早期の対応が行い得ていると思われます。時間外の指示を、厭わらずに受けてくれるスタッフには深く感謝しています。
以上が当科の現状です。ひとりでは忙しいけれど、2人常勤になったら暇になってしまうと思われます。関連病院の1つとして、大学病院からの応援を今後とも宜しくお願い申し上げます。