平成24年4月8日、満開の桜の下、山口市総合保健会館で日本泌尿器科学会創立百周年記念市民公開講座「もっと知りませんか?あなたの身近な泌尿器科の病気」が開催された。絶好の花見日和に当日参加希望者が減るのではないかというスタッフの心配をよそに午前9時20分、待ちわびた市民の皆さんが会場に入り始めた。手には受付で配布した公開講座のプログラム、記念ボールペン、体験手記、エッセー受賞作品集「泌尿器科とわたし」がセットになった袋を持っている。開始直前に確認できた入場者数約250名と聞き、やや安どする。
午前10時、河野太郎氏(衆議院議員)による「私と臓器移植〜我が国における臓器移植医療の展望〜」が始まる。臓器移植法案反対の急先鋒だった氏がご自身の移植ドナー体験を通して、移植推進派に転換された経緯や今後の移植医療の在り方についての講演だった。肝性脳症となり、実の娘の顔をみてもわからない状態だったお父上が、退院時にはポーランド総選挙の結果を知りたがるほどに回復された話は圧巻で、会場の一同は氏の話に引き込まれ、移植医療の素晴らしさを実感した。移植後10年たった今もご健在で、多忙な生活を送っておられる由であった。自身の考えを堂々と主張される氏の姿に我々関係者もオーラを感じた講演はスタンディングオベーションとともに終了した。
10分の休憩を挟み、11時10分より第2部シンポジウムが始まる。那須誉人医師(徳山中央病院)による前立腺がん、和田 尚医師(わだ泌尿器科クリニック)による排尿障害(過活動膀胱と前立腺肥大症)、土田昌弘医師(山口大学医学部)による腎移植の講演が行われた。最近話題の多い疾患が多かったためかその後の質問コーナーでは多くの質問が寄せられ、参加者の関心の高さがうかがわれた。予定を15分オーバーし、12時30分に公開講座は終了した。最後に寄せられた感想を書かせていただく。「本日は大変に良いお話を聞かせていただきまして日頃自分の悩んでいました事がよくわかりました。心から感謝申し上げます。早速病院に行って検査などをいたします。(83歳、男性)」。