軽いジョギングや速歩きでは、足の着地時に頭部へ重力加速度(約1G)と同程度の上下方向の衝撃が加わります。この物理的刺激により、脳内の間質液(細胞周囲の体液)が流動し、血圧を調節する中枢に存在する細胞へ機械的な刺激(流体せん断力)が伝わることが明らかとなっています。
その結果、こうした機械的刺激により、血圧調節中枢におけるアンジオテンシンII 1型受容体の発現低下と交感神経活動の抑制がともに認められ、これらの変化に伴って血圧低下が生じることが、動物実験により示されました(Sakita N, et al. Nature Biomedical Engineering, 2023)。
さらに、この現象はヒトにおいても再現されており、頭部への同程度の上下方向の刺激を与える座面上下動椅子を用いた臨床研究において、高血圧患者を対象に、1日30分、週3回、約1ヶ月間の介入により血圧の低下および交感神経活動の抑制が認められ、その効果は介入終了後も一定期間持続することが確認されています(Sakita N, et al. Nature Biomedical Engineering, 2023)。
これらの結果は、運動の健康効果の一部が、体への適度な揺れや刺激によってもたらされる可能性を示すとともに、新たな治療介入につながる可能性を示しています。