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上下運動刺激がもたらす効果の循環器疾患への応用

山大医学部第二内科

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研究内容

運動が健康維持・増進に有効であることは広く知られていますが、その具体的なメカニズムについては、これまで十分には解明されていませんでした。近年、国立障害者リハビリテーションセンターの澤田泰宏氏らの研究グループは、座面が上下に動く特殊な椅子を用いて、軽いジョギングと同程度の刺激を再現することで、高血圧の改善効果が得られることを報告しました。この研究成果は、運動がもたらす健康促進効果の新たなメカニズムを明らかにするとともに、十分な運動が困難な患者さんに対する新しい治療アプローチとなる可能性を示しています。さらに、こうした上下運動による効果は、高血圧にとどまらず、糖代謝や脳機能への影響など、多面的な健康効果につながる可能性が示唆されています。
 このたび当科では、当科とゆかりの深い医療法人青藍会様のご協力のもと、上下運動がもたらす健康増進効果を検証する研究に参画することとなりました。

これまでの研究でわかっていること

 軽いジョギングや速歩きでは、足の着地時に頭部へ重力加速度(約1G)と同程度の上下方向の衝撃が加わります。この物理的刺激により、脳内の間質液(細胞周囲の体液)が流動し、血圧を調節する中枢に存在する細胞へ機械的な刺激(流体せん断力)が伝わることが明らかとなっています。
 その結果、こうした機械的刺激により、血圧調節中枢におけるアンジオテンシンII 1型受容体の発現低下と交感神経活動の抑制がともに認められ、これらの変化に伴って血圧低下が生じることが、動物実験により示されました(Sakita N, et al. Nature Biomedical Engineering, 2023)。
 さらに、この現象はヒトにおいても再現されており、頭部への同程度の上下方向の刺激を与える座面上下動椅子を用いた臨床研究において、高血圧患者を対象に、1日30分、週3回、約1ヶ月間の介入により血圧の低下および交感神経活動の抑制が認められ、その効果は介入終了後も一定期間持続することが確認されています(Sakita N, et al. Nature Biomedical Engineering, 2023)。
 これらの結果は、運動の健康効果の一部が、体への適度な揺れや刺激によってもたらされる可能性を示すとともに、新たな治療介入につながる可能性を示しています。

 

今後の展望

 当科では、本研究の推進に積極的に協力するとともに、心不全をはじめとする循環器疾患への応用の可能性についても検討を進めていきます。一日でも早く患者さんの健康増進に寄与できるよう、研究に取り組んでまいります。

 
 
第二内科
南野 巧真


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