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がん治療関連心機能障害の予防法の開発

山大医学部第二内科

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メンバー

  中村 吉秀
 

山本 健

小林 茂樹

末冨 建

内海 仁志

佐野 元昭

研究内容

 ドキソルビシンを含むアントラサイクリン系抗がん剤は、多くのがんに対する治療に用いられていますが、その効果の反面、心毒性という重大な副作用があります。心毒性に対する有効な予防法は存在しないため、アントラサイクリン系抗がん剤の総投与量は厳密に制限されており、最適な抗がん剤治療の継続を困難にさせています。

 本研究では、ドキソルビシンが2型リアノジン受容体(RyR2)に直接結合し、四量体構造を不安定化させることでカルシウムイオン(Ca2+)の漏出がおこり、これが小胞体ストレス注4)とフェロトーシス注5)の誘導を介して心毒性・心機能低下を引き起こすことを、マウスによる実験にて証明しました。

 これらはダントロレンを投与する薬理学的介入またはRyR2に1アミノ酸変異を導入する遺伝学的介入により、RyR2へのカルモジュリン結合親和性を増強させて四量体構造を安定化させることを介して抑制され、またこの心毒性抑制効果はドキソルビシン投与後の短期間のみのダントロレン併用で十分に効果を発揮しました。このことから、ドキソルビシンによる心毒性の機序はドキソルビシン投与後早期のRyR2受容体の不安定化による小胞体からのCa2+漏出が大きく関係していると考えられました。

 ダントロレンは既に臨床現場で悪性高熱症の特効薬として使用されている薬剤であることから、ドラッグリポジショニングによって、ドキソルビシンによる心毒性の予防薬として臨床応用されることが期待されます。

 本研究成果は、2024年12月10日19時(UTC)、JACC:CardioOncologyに掲載されました。詳細はこちら



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