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【研究】心房細動アブレーション後の予後予測に新たな視点

山大医学部第二内科

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2025年8月5日

「左心房がどれだけ縮んだか」より「最終的な大きさ」がカギ

当講座の講座の石口博智助教、吉賀康裕講師、佐野元昭教授らの研究グループが、持続性心房細動に対するカテーテルアブレーション後の長期的な予後予測について、新たな指標を発見しました。

心房細動とアブレーション治療

心房細動は、心臓の上の部屋(心房)が不規則に動く不整脈の一種で、日本でも高齢化に伴い患者数が増えています。放置すると心不全や脳梗塞などの原因となるため、根治を目指す治療のひとつに「カテーテルアブレーション」があります。この治療は、心房細動を抑えるだけでなく、拡大してしまった左心房を小さくする効果もあります。

研究でわかったこと

これまで、アブレーション後の予後(その後の健康状態)には
・左心房がどれくらい縮んだか(左心房リバースリモデリング:LARR)
・アブレーション後の左心房の大きさ(左心房容積係数:LAVI)
のどちらが重要かは明確ではありませんでした。

今回、研究チームは365名の持続性心房細動患者を対象に解析を行いました。その結果、治療後の左心房の「最終的な大きさ(LAVI)」が大きいほど、その後の重大な心血管イベント(MACE:死亡、心不全入院など)が多いことが明らかになりました。
一方で、どれくらい縮んだか(LARR)の割合と予後には明確な関係が見られませんでした

なぜ重要か?

この結果は、「治療後に左心房が十分小さくなっていない患者」は、心房そのものの病気(心房心筋症)や他の病気を抱えている可能性が高く、その後のリスク管理が必要であることを示しています。アブレーション後のLAVIは、こうした高リスク患者を見つけるのに役立つ簡便な指標と言えます。

今後の展望

研究チームは現在、山口県・島根県の6施設で多施設共同研究(ORANGE-AFレジストリ)を開始。左心房の大きさだけでなく、その機能や併存疾患なども含めた総合的な予測モデルの開発を目指しています。


掲載論文
Scientific Reports(2025年7月28日掲載)
タイトル:Comparison of Post Ablation Left Atrial Volume Index versus Left Atrial Reverse Remodeling for Prognostic Events in Persistent Atrial Fibrillation
著者:Hironori Ishiguchi ほか
DOI:10.1038/s41598-025-13311-w

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